彼女が笑っている瞬間、一瞬だけ違うな。と感じる自分がいる。
それがなにかはっきりしない。
もやもやとしたから、そのままバレーボールに当たれば、パァンといい音がして破裂した。
留三郎がなにか言っていたけれど、滝夜叉丸がなにか言っていたけれど、
なにかが変だ。なにかが足りない。
そんなわけない、今日も彼女は笑っていて、美味しいお菓子を用意してみんなで輪になって
楽しくて・・・・・・ア、アレ?前もそんなことをしていなかったけ?
そういえば、と合わなくなってどれくらい経ったけ?
あの日、怪我をさせたとき、いたのは誰だっけ?
私はなにか重要なことを忘れているきがして、なにか大変な間違いを犯した気がして
急いで走った。どこに?どこかへ。
精一杯走って、走って、辿りいた先に、いない。
おかしいな。彼女はだって、あまり外へ出たがらないから、いつも・・・・
あれ?誰の傍にいたんだっけ?あれ?どこが定位置だっけ?
長次が、縄?で私を縛って注意する。図書室は静かに。それにいつも笑っていたはずだ。
それがいつもの・・・・・・・。彼の後ろには誰もいない。
なんで、いないんだろう?どこへ行ってしまったんだろう?

ぐちゃぐちゃになる頭に。

無言のまま図書室を後にした私が目にしたのは、5年生。
そっくりな顔。彼らが幸せそうな顔をして誰かと一緒に出かけようとしている。
その子も幸せそうに二人に付いて歩いている。

先輩、綺麗な場所を見つけたから。甘味屋に行った帰りでもよりましょう」

ぱぁっと光り輝くような笑顔をする子。
なんで、それは私によくしていたはずなのに。

、綺麗な場所があったんだ。それはな」

その話に耳を傾けて嬉しそうにしていた。あの子。そう、
私達の大切な。でも、はいくら誘っても私について来なかったはずだ。
それなのに、今見えているは、彼らに連れられて、私服姿で外へ出ている。
嬉しそうに、楽しそうに笑ってる。


。と声をかけて走ればいくらでも間に合ったはずなのに。
私の足はそこに固定したまま動かなかった。

「あ、どうしたんですか?小平太さん。お菓子できてますよ?」

ちゃんととってますから、みんないるから行きましょうと笑う彼女。
この子は一体誰だろう?名前が出てこない。
でも、彼女の傍は楽しいから、みんなもいるからやったーと言ってその場を動く。
前ならば彼女の手をとって、いけいけどんどーんで走るのに。
今日は手を取ることが出来ない。
だって、今手を取れば完全に違うことに気づいてしまうから。
彼女の手は柔らかい、でも硬くてもっと小さな手を求めている。
なんで?誰を?分からない。今はただお菓子と友人と彼女。前だけ見てればいい。
これこそ、文次郎の台詞にもあるバカタレな行為であった。
だって、信じたくなかった。自分の行為を。彼女の行為を。
だから、あれは見間違いで勘違い。
私達の大切なは今、きっと自分の部屋で本でも
読んでいるから、後でお菓子でも持って久しぶりに話しに行こう。

あまり会わなくて寂しがったいるかもだから、みんな連れて、騒ごう。
そうすれば、全部元通りで、も彼女も一緒で、きっと幸せ。





珍しいものをみた。
僕が不運で、昼ご飯がみんなよりも遅れてしまったときにそれをみた。
彼女は、色々忙しいから定時の昼ごはんが過ぎればもういなくて、今頃どこかで事務の
仕事でもしているんだろう。ついてないなぁ。逢えないなんて。と味噌汁をすすっているときに、
ちらりと、ピンクの服と右手を覆う白い包帯が目に入った。
ちらほら人がいるなかで、小さな体が食堂へ向かう。
久しぶりに見た。だ。僕らの親しい友達で、そういえば最近会ってないなぁなんて、
のんびり考えていた。
最後にあったのはそうだ。が誤って彼女にぶつかって怪我させてしまったときだ。
あれから幾日も経ってないけど、酷く懐かしいのはなんでだろう?
そういえば、利き手に包帯を巻いていた。どこで怪我したんだろう?
保健室に来ていないのに誰に巻いてもらったんだろう?
それよりも、人の多い場所を好まない彼女がここにいるのは大変珍しいし、
久しぶりに話もしたい。一人でご飯は寂しい。
そう思って、僕はに声をかけようとしたんだけれど。

?どうしたんだ。こんな所で」

先輩?」

顔が似ている5年の双忍に先をこされた。ってば何時の間に彼らと仲良くなったんだろう。
は、二人の下へかけていくと、笹で包まれた二人ぶんのおにぎりを渡す。
ボロボロである彼らは実習帰りなのだろう。

「うわーまじかよ。もうご飯ねぇの?おばちゃん」

「ごめんね?昼はもう終わっちゃたのよ」

後ろでうなだれている竹谷に久々知の姿。

、これって?」

「えーと、僕らのぶん?え、でもおばちゃんはないって」

ぱくぱくと動く口。僕はちょっとしか読唇術が使えない。でも、

「そうか。作ってきてくれたのか。ありがとう」

「うん。嬉しいよ」

と喜ぶ彼ら以上に喜んでいるの姿。
あれ?なんだろう。どうしてだろう。
が僕ら以外と仲良くなるのはいいことだって思っているのに、
泣きたくなったのはなんでだろう?
僕は、すぐに席を立ってお盆をかえす。は僕を見ることなく二人を見て笑っていた。

「おい、三郎。それちょっとわけろ」

「死んでもやるか」

「雷蔵」

「ごめんね?兵助。これは駄目」

そういえば、は、ご飯自分で作っているから時々僕もくいっぱぐれてよく貰っていた。
笹の葉に、綺麗な形の梅おにぎりとたくあん。
ちょうどいい塩梅に塩気が効いていて、美味しかった。
でも、人ごみの多い、食堂で待っていてくれることはなかったな。
なんて、比較して何がしたいんだろう。僕は。
なんで、ちょっと泣いてるんだろう。

包帯を巻いたのは、僕じゃなくて彼らになってしまった事実を僕はまだ知らない。
彼女が僕らの元へすぐに戻ってくるなんて根拠のないことを信じていた。












2009・12・2