「また、明日」
それが私達が失ったもの。
なにも言わず私達が集まった場所は図書室だった。
長次がいない図書室はどこかおかしくて歪だ。
ぺたんとみんな座った。
昼間だと言うのにここはこんなに寒かった場所だっただろうか?
たった何週間で変わってしまった。
私達の六年間は、なんだったのだろうか。
「天女」様がいなければ、私達は変わらなかったのに。
そうだ。「天女」様がいなければ。
「俺は、が好きだ」
と声を落としたのは、留三郎だった。
「大切だとか、可愛いとかそんなことの前より好きだったんだ。
人一倍怖がりで、人一倍寂びしやだって知っていたのにな。
俺は手を離してさ。あれほどの恐怖はねぇよ」
しーんと沈黙が落ちて、図書室以外の外から笑い声が聞こえた。
「私だって、が好きで、大切だ。
だけど、私は・・・はしゃいで、時々馬鹿をする。
だから」
小平太の、だからの後は言葉が続かなかった。
「僕ね、ずっと気になっていたんだ。傷だよ。あの日見た傷。なんだったのかって、
本当は知っていたのに、分からない振りしてた。を追い詰めたのは、僕らだった。
僕ら自身で壊したんだよ」
「戻れないのか?」
「仙蔵」
「文次郎。私はな、を一人にしたことを後悔してないぞ。は私のものだからだ。
だけれど、放ったことは後悔している。6年も傍にいて性格を忘れたわけではないのに、
を一人にしたからこそ、一人にさせてはいけなかったことを忘れてしまっていた。
急に全員から手を離されれば、こうなることなど分かりきったことだというのに」
「仙蔵」
「文次郎。私達はとても阿呆で馬鹿だ。
は、そんな私達をな、最後まで嫌いになどなっていなかった」
「もう元には戻れないよね」
「もう、無理だろう。は彼らを選んだ。俺達はあの時よりも天女を選んだ。
それだけのことだ」
「」
「泣くなバカタレ。選んだのは俺達で、捨てられたんじゃない、捨てたんだ」
下を見ればそこが見えないほど暗くて上を見れば天井から光が入って
とても綺麗でした。綺麗だから、私達は声をなくして、涙を流した。
もう戻れないのなら・・・・・・。
外の世界で、誰かが石を蹴りました。
終わったのです。始まったのです。
2010・1・4