急いで今日を終わらせて明日を嬉しく思うんです。
私はくのいちには向いていないけれど、音がないから暗殺とか静かにする仕事は
とても向いているのです。もうそろそろ帰る場所です。
私の帰る場所。お帰りなさいって待っていてくれる温かい場所。
それなのに、どうして?
どうして彼らは倒れているのでしょうか?
どうして彼らはボロボロなのでしょうか?
みんなが彼らをボロボロにしてます。
私は、声がないけれど、叫びました。大声で、どうしようもない声で。
目に入った彼らをボロボロにする武器は壊しました。
それくらいは造作もないことです。
けれど、私にできることはここまでです。
誰かの武器を壊すときに私の最後の武器は壊れてしまいました。
ボロボロな彼ら、愛しい彼らは私を見てます。大丈夫ちゃんと息をしています。
涙がでそうですけれど、私は彼らに向き合わなくてはなりません。
だって、これは私のせいなのです。
ばっと手を広げて、私の最後の武器は、そう、私自身。
彼らがこれ以上傷つけられてはいけないはずです。
傷つけられるべきなのは私なのです。
久しぶりにみたみんなは、私の記憶の中のみんなと一つも変わっていなくて、
それが無性に悲しくさせます。私は、まだ彼らが好きなんです。
私の大切な人を攻撃するほど私を嫌いで憎まれていても、
私は彼らを最後まで嫌いになりきれませんでした。今このときでさえ。
だって、そうでしょう?
私がここまで生きていた歴史の中で彼らは確かに私を守り支えてくれていたのです。
私の中の彼らは私に幸せと笑顔をくれました。
私は二人を守りたいのです。それが一番。
私は彼らを攻撃できません。それが二番。
だから、いいのです。私を壊されても、それは仕方がないと言えるのです。
悲しいです、苦しいです。でも泣いてはいけません。
痛いです、怖いです。でも震えてはいけません。
私は、守るのです。守られるだけでなくてちゃんと守るのです。
私の両手が見えました。ちゃんと伸びているけれど、かすかに震えています。
ざまぁないですね。
大声で、何かを言っている仙蔵。
声がないから小さな声でも大きな声に聞こえる私に、その声は大きすぎます。
ええ、そうです。私が悪いのです。
私が彼らを愛さなければ、攻撃なんてしなかったでしょう?
でも愛したんです。温かくて優しい彼らを愛しました。
今の世界で、私は声をなくしました。私は人を恐れました。
私のせいで、いくらの人が傷つき、いくらの人が泣いていて
それを忘れてはいけない戒めのために。
だから、悪いのは私を騙したとかじゃなくて、私を奪ったとかじゃなくて
愛してしまった私なのです。
後ろから、もういいとボロボロな彼らが私を守ろうと立ち上がろうとします。
やんわりと笑顔で阻止します。
前を向きなさい。私。
私は彼らを愛しました。あなた方を愛したときのようでまったく違う愛しかたです。
私は言葉が嫌いです。私を攻撃する言葉など死よりも恐ろしい。
だけれど、今私は愛しかったものからの恐怖を受けて死んでいません。
そういうことなのです。
手を大きくもっと大きく広げます。
目の前になんだか泣きそうな彼らに私は気づきました。
なんで、そんな顔をしているんですか?
仙蔵の声は私が聞き取れないほど小さくなって文次郎に運ばれて、
「」
小さな彼の声が聞こえました。
彼は相変わらず彼でした。彼の回りに変化はなく。
時々彼が妖精であると言われるのも納得がいくものでした。
彼の手が私に近づきます。叩かれるのでしょうか?いいでしょう。
あなたに叩かれたならば私はきっと全て終われるような気がするんです。
私はなぜか知りませんが、彼らを酷く傷つけたようなのです。
私を憎むことがきついからでしょうか?
それならば彼らは私にはもったないほど優しいのです。
だから、目を逸らさず彼の一挙一動見ていました。
彼は私に何もせずに、背を向けました。
それが始まりで終わりであるかのように、彼らは私から背を背いて、時々は振り返って
いなくなっていきます。
彼れが一人もいなくなれば、
私は、そのままぺしゃっと足を崩して、後ろから頭を抱きかかえられ、腰を抱きかかえられ
待ちに待った人たちが泣いています。ボロボロなのに、私のために泣いてくれます。
私は笑って泣きました。
「ありがとう」
いいえ、こちらこそ。ありがとうなのです。
私はようやく愛しい人たちの元で泣けるんですね。
悲しかった。嬉しかった。愛しかった。つらかった。今までの全てを流すように
泣いて泣いて、眠って、「また明日」
それが終われば笑うだけなのです。
終わったと思いました。いったいなにが終わったのか私は分かりません。
ただ、終わったのです。
そして、始まったのです。
2009・12・9