久しぶりにあった同級生。つっても昔の世界でのだけどな。
いやー、まさか過去を覚えているってことあるんだな。
さっき兵助にもあったんだけどさ、ちゃんと覚えてるって、
先生方もいるし、あははは。お前達が覚えていてくれて嬉しいぜ。
ん?なんで雷蔵そんな深刻な顔をしてるんだ?
それから、雷蔵に言われたことは驚くべきことだった。
「はぁ?覚えてない?」
「そう。僕らはあの時のこと覚えているけど、は覚えてないんだ。
一つも」
「・・・・・・それって先輩達のこともか?」
「そう」
「お前らは」
いいのか。と言おうと思った。
だって、お前らは先輩から救って、その後も、と幸せで。
けど、雷蔵の目が、優しい顔じゃなくて、
迷い癖のある彼が稀にみせる決意を持った顔をしていて、言うことができなかった。
「僕らは今のままでいいと思ってる。
無理やり、あのことを思い出させたくないんだ。
それに良いポジションだしね」
「ポジション?」
なんのことだ。と言う前に、三郎が、先輩を連れて現れた。
三郎の服の端を掴んで、
体に不釣合いの大きなスケッチブックを持っている
先輩は、相変わらず、小さくて可愛い。
ひよこみたいだな。と上からまじまじと見ていれば、
ちょっとこっちみて、すぐに三郎の後ろに隠れて、ちらりとこちらをうかがう。
身長により、上目づかいだ。
あー、ヤバイ。これは飼いたい。今すぐ飼いたい。
矢羽音で「おい、変態。これ以上見てるとくりぬくぞ」とか、
「前も言ったけど、飼いたいとか思っていると、どうなるか分かってるでしょう?」とか、
聞こえたので、俺の猛る思いを収め、ようやく三郎が俺の紹介をした。
「。紹介するな。私達がたまにいく風呂場で出会う男。竹谷だ」
なんて雑な紹介。ってか俺ってなに知り合いレベル?
俺達って友達なんじゃなかったのかよ。それと下の名前も言ってくれよ。
とか色々言おうとしたけど、先輩はさっきまで、三郎の後ろに隠れていたのに、
俺の前に出て、ちゃんと目を見て。
『はじめまして、 です。えっと、先輩じゃなくて、一年だから、
。って呼んでください』
と、やっぱり声のない音で伝えてきて。
こういうところもまったく変わっていないで安心した。
たしかに、記憶がなくても、彼女は彼女なのだ。
じゃぁ、俺は今からまた彼女の友達になれば良い。と
ニカっと笑って。
「いやーさっきは、人違いしちゃってごめんな?すっげー似てたんだよ。
俺、竹谷 八左ヱ門。ハチって呼んでくれ」
って手を出せば、彼女は恐る恐る俺の手の半分くらいの小さな手を出した。
俺は、手をぎゅっと握って振って、これで友達だ。と言えば、
彼女はパチクリと目を瞬きしてそれから、笑った。
『うん。ハチ。嬉しいです。この学園に来てからはじめての友達。よろしくね』
可愛い。なにこれ。やっぱり飼おうかな。
昔よりも同級生ってことで心許しちゃってるし、
それよりもはじめての友達って、良かった兵助よりも先に見つけて。
心の中で、ガッツポーズをしていれば。
『それと、三郎と雷蔵の幼馴染なの』
後ろで、同じ顔が笑った。
そうだよな。おまえらが、先輩を離すわけがないよな。
死んでも、なお強く結ばれているそれって、凄いことで、ちょっと羨ましい気がした。
2010・1・10