今私は、潮江先輩と茶店に来ているもちろん二人きりでなぜならば、私たち恋人になったからだ。
甘えてめい一杯笑う。幸せで死にそう、ずっとこうなることを望んでいたから。
潮江先輩の口から「小春さん」の名前が出てきて、私は暗くなる。
そうだよね。分かってる。
潮江先輩は、本当は小春さんが好きで私が無理やり泣き落として付き合ってもらっているのだ。
それを前提で付き合ってもらっている私に止める権利などない。
そうだよ。でも。
「私のこと好き?」
「ああ、好きだ」
「ウソつき」
もう耐えれない。パァンと頬を叩き、涙を流す。「バイバイ」
悲しみのあまりその場を後にする。目をコレでもかって開いている潮江先輩の顔を
私は。
笑いをかみ殺した。
実はコレ任務なのだ。三文芝居で結構コケコッコー。
敵は、年若い娘をさらって売る売春集団。苦情が重なり忍術学園に任務がき、
潮江 文次郎先輩と私・ に話が来たのだ。
私が囮になり敵をおびき寄せ、そこを潮江先輩が一網打尽にするという計画は、
私が潮江先輩の頬を思いっきりぶち、流れてない涙をそのまま拭く振りをし、案の定慰めると言って
奴らに連れ去られ、家に帰してと泣き叫ぶまでは良かった。
計画外。規定外。エマンジーくーるくる。そう、来るはずの潮江先輩は来なかった。
その代わり、綾部君が来た。
彼は、作法の先輩と小物屋に来ており、私を見つけた際につけてきたらしい。
無表情で、鋤で相手を倒していく。乱れた着物は煩わしいのでそのまま彼を狙う男に投げつける。
一瞬驚いた顔をしたような気がしたが、そのまま戦いに身を投じる。
私の姿でくの一だと知った彼らを一人残らず、こん睡状態に落ちいれさす。
結果、一網打尽出来たのだから、オールオッケイだ。
任務が大好きな男・潮江 文次郎。学園で一番忍びをしている男が、
暗い顔をして帰ってきた。
「なにがあった」などとは聞かずとも知っている。というか、付けていたとも言うが。
文次郎と、あのの任務だと知った
私は適当にいた喜八郎を連れて小物屋を行く振りをしてその動向を見ていた。
私は驚くものを目にする。
一つ目は、の変わりようだ。綺麗な化粧と綺麗な服を着て見れるようになったが、
それ以上にあまり笑わない印象が強いが笑い体全身で好きだと言っている。
文次郎が戸惑っているのが分かる。その姿を笑いに来たはずなのに、自分がペアならば
と考え引きつった顔しか出来なかった。
二つ目は、文次郎が任務を放棄した点だ。
原因は、目の前で起こった強盗だった。人質は、小さな子供。
男は下衆な奴で、母親の前で、少しずつ子供に傷をつけていく。物取りと言うよりも、
殺すことに快楽を得ている奴だった。私はすぐにでも向かおうとしたのだが、お姉さん、じっとしてたほうがいいと
店の店主に捕まってしまった、今の格好が仇となったかと舌打ちをするまに、
文次郎は子供を助けた。それと同時に任務放棄となった。
子供を助けるのは文次郎ならば簡単だが、助けてしまえばたちの姿を追えなくなるそれを分かった上で助けたのだ。
帰ってきたは前の服ではなく忍び服で帰ってきた。
文次郎は、門の前ですまないと頭を下げていた。彼女は、そのまま静かに。
「先輩は忍び失格です」
当たり前な言葉は、私にも突き刺さる。あそこで私が助けていたならばこんなことにはならなかった。
「任務を放棄してはならない。これは一年でも習う簡単な忍びの基本です」
文次郎は頭を下げたままだった。学園で一番忍びをしている男にその言葉は屈辱だろう。
私は、事実を言うために前に出ようとした。しかし、彼女はこう続けた。
「ですが、人としては合格です」
その言葉に驚き顔を上げた文次郎には幾分目を柔らかくした。
「私はすべての人を守ると言う人は大概信じてません。何故か分かりますか。
千を選んで一を捨てるからです。一を助けなくて千を助けれるはずはないからです。
否、助けられたとしても、英雄であって人ではないんです。
だから、潮江先輩、あの子供を助けてくださってありがとうございます」
実は知り合いなんですよ。と笑った。
「でも、潮江先輩覚えていてください。今回は助かったからこれで終わりますが、
次は結果良しといえない選択を迫られます。人であるか、忍びであるか。
その現実が来るということを忘れては駄目ですよ」
そう言う彼女は、4年生としては、年を取りすぎていた。
徐々に暗くなっていく部屋に私たち二人は火も付けずに、ただ座っていた。
文次郎はいつもの大きな声を出す奴とは思えないほどの小さな声で言った。
「先生が言われたよ。今回は、だから良かったのだと、死んでいれば、
俺は一生それを背負っていくのだと、・・・・・・忍びであるか人であるか、か」
「もう、寝ろ文次郎」
それしか言えなかった。
いつもならば、いないはずの横の布団でよほど疲れたのか文次郎は熟睡している。
驚いたこと、三つ目。
あの喜八郎が、笑うたびに泣くたびに、あんなに表情が揺れるなんて、あの騒ぎの前に、
あんなに焦って追いかけに行ったなんて
・・・・・・文次郎には悪いが、こっちのほうが衝撃が強すぎて眠れそうにない。
え、何?好きとかそういうことですか?誰か教えてください。
2009・10・3