僕の幼馴染である、 は少々変わっている。
女だというのに、女を忘れたような格好でいる。彼女はちゃんとすれば僕のこのアイドルの幼馴染なのだから
見れる顔をしていると言うのに。なので、仕方なしに僕が彼女の格好を直す。
憎っくき滝夜叉丸に、「女に鼻で使われている」と言われムカついたが、
「違う違う、三木は綺麗なものが好きなんだよ。ピチっと整理整頓された姿がね、
だからこれは彼の美意識に反するんだよ。平君」
とに言われて、あの滝夜叉丸は口を閉ざした。あの滝夜叉丸がだ。
それどころか、「そうか、ならば誇り高く美しく無論、三木衛門よりも美意識が高い私が、
さんの髪を結って差し上げましょう。何、遠慮は要らない。私にかかればボロボロな髪も私のように
サラサラビューティに美しくに変わりますよ」と、髪をいじくりだす始末だ。
アハハハハ。とは笑っていたが、男に髪を触られて何の反応も示さないこいつに呆れるよりも、
そもそもこいつがちゃんとすればいいだけだろうとかよりも、
「こら、滝夜叉丸。それは僕の仕事だ」と言ってしまった僕も大概侵されているのだろう。
ちなみに、その後やってきた斉藤さんの手によって、僕らがぐしゃぐしゃにした髪は綺麗になった。
斉藤さんに大概怒られたが、当の本人は気にしておらず、寧ろ。
「きたない」と言いながらも、ベタベタ触りまくっている喜八郎の行動に怒ればいいのか、触るなと言えばいいのか
微妙な顔をしていた。
「綾部君はなぜ私にあんな仕打ちをするのだろうか」
それに対して僕の答えは。
「お前のこと好きなんじゃないか」
だった。一度沈黙したが、はすぐさま頭と手を横に振り。
「ないない。一度考えたけど、違う絶対違う。それに」
次の言葉は予想は出来る。こいつの十八番の言葉。
「私を好きな奴はいないよ」
僕はその言葉は嫌いだが、あまり言うなと言えるけれど止めるなとは言えない。由来を知っているからだ。
同じ村で育ったこいつは昔から真っ直ぐすぎるところがあった。
サバサバして付き合いやすくその頃から僕と彼女はよく二人で遊んでいたが、
突然隣に住む男の子が、『お前を好きになるやつなんて一生いない』と彼女に言ったのだ。
僕が思うに、彼は彼女が好きで僕としか遊ばない彼女に対しての些細なイタズラだったのだろう。
しかし、運の悪いことに、彼女の性質と家庭環境を考慮していなかったようで、
は今でもその言葉を信じている。
それ以来、彼女の性格は、悪い方向に変わった。
明らかに好意を向けられても、好意を向けても一度冷静になり、
自分を好きになるやつはいないという強固な考えにより、諦めるという悪循環を繰り返して、
いつしか身の回りのことを気にしなくなり、女は結婚という常識はなく、
一人で生きていかなければという考えが根ずいた。
僕は最初彼女が落ちこぼれだったのを知っている。
今、彼女がここまでなれたのは、その意識のために死に物狂いに努力した結果だとすれば
その考えを改めることは難しいだろう。しかし、あまり言うなということを止めることはできない。
ああ、誰か、コイツに冷静になれないほどの恋を教えてやって欲しい。
そして、それが滝夜叉丸ではないように祈る。
知ってるか?結構、お前を好きな奴が多いことを。
2009・10・2