休日最高と叫ぶわけでもなく、惰眠を貪る私に、
「出かけよう」と小春さんに天使の笑顔で言われ
おきかけの私は内容をあまり聞かずに頷いてしまった。
それが失敗。
ガヤガヤとにぎわう町。チラチラとせわしない視線の洪水。
最低最悪、。なんの罰ゲーム。
六年の中でも人気がある、立花 仙蔵を筆頭に潮江 文次郎、食満 留三郎。
「伊作くんは?」
「ああ、あいつなら出かける前に薬をぶちまけたので、片付けてから来るらしいですよ」
あとは、不運と噂の善法寺 伊作。
保健委員だと言うけれど、私は会ったことがない。かなりお世話になっているのに、
なぜだろうか?
「あ、この子が前話してた、 ちゃん」
はじめましてと言おうとしたが、立花 仙蔵に遮られる。
「お前が か・・・くのたまで一番の成績らしいな」
「ハハハ。そういう先輩こそ、六年の中じゃ一番だって聞きましたよ」
と言えば、切れ長の目が少し柔らかくなった。
「ハハハ」
やっべ、この先輩分かりやすいわ。
「何を言う。俺が一番だ」
「何を言うか、お前は私の下だろう?」
おやまぁ、一食触発の雰囲気。だがしかし。
「そうだね、皆凄いね」
小春さんの一言で皆の雰囲気がほのぼのとしたものに変わり、彼女を囲む円が出来る。
私はその後ろをトボトボ付いていく。まぁ、いいけどね。
小春さんの報告書を書いているときにその凄さは知ってたけれど、
わびしいより、生でみれた喜びのほうが強い。と、あまり関わりたくないのもある。
「ちゃん、ココ、ココ!!」
ココと指す場所に私は驚いた。
凄いな。小春さん。私なら男とそこ行こうと思わないもん。
潮江先輩とか食満先輩とかっていうか立花先輩以外皆ここに入ったらおかしいから。
この可愛らしい女性専門の小物店に、気にした様子もなく小春さんは私の腕を取った。
これ、どう?と言われる。うん、抜群に可愛い。そして、横からの3人の視線がウザイ。
私を観察するな。おまえら!小春さん可愛いとか思っているだけでいいだろう。マジで。
綾部君ほどじゃないけど。結構いい迷惑。
「あ、私コレ買ってくるね」
そういって、場の空気をある種読んだ小春さん。
ああ。
「さて、お前に聞きたいことが二、三ある」
ずいっと近づかれた顔はくのたまに人気があるだけに確かに綺麗な顔をしている、が私に言わせれば。
「色気がない」
ピシリと、何か亀裂音がした。目の前の人物以外の2人の顔色が悪い。
「・・・・・・私が、色気がないだと」
「先輩、髪が凄いことになってますよ」
殺気で揺らめいて蛇女みたい。と言えばまたピキリと音がする。
「お、おい。。さっさと謝っとけ、な」
食満先輩の言葉ではっ見上げれば、にっこり笑いながらまったく笑っている雰囲気ではない立花先輩。
よし、謝ろう。
「えーと。あれ、あれですよ。あまりに美しすぎるから、なんだろうそう、お人形みたいで、肌も白くて美しいし、
髪だってサラサラ憎いね。この。しかも、能力も高い。最高ですよ。立花先輩」
とおだててみると、一応殺気は消えた。後ろでほっと安心した声が聞こえると、
「え?ちゃん。仙蔵くんタイプ?」
と笑顔で凄い爆弾を落とした。私は、好きな人には正直な性質だ。
即効で返してしまった。
「いいや、まったく」
またもや、空気が固まった。
はっきり言おう、立花先輩はちょっと平君に似ていると。
たぶんそれにナイーブを付け加えたんだろう。なんだか、もう一度おべっか使うのメンドクサイなと思い始めたところで、
小春さん爆弾が炸裂する。
「そうなの?仙蔵くんかっこいいのに・・・・・あ、じゃあさ、この中で一番誰がタイプ?」
かっこいいで、浮上してくれて良かったよ。あ、話聞いてない。
「ねぇ、誰?」
誰って誰?・・・適当に指差しておくか。
「マジかよ。ありえねぇ」
「・・・目が悪いのか」
「どういうことだよ。それ」
フム、この反応は好きなタイプぽい。だったら、正解を引き当てたな私。良かった、立花先輩指さなくて。
心底変な奴だと見られている目が2つ、むずっとイタズラ心が沸いてしまった。
「だって、潮江先輩は、立花先輩みたく肌白くないし、目は切れ長じゃないし、髪はサラサラで長くないし、
体だってスレンダーじゃないし、おまけに隈まであるし、それに一番らしいし?」
目が点になった三人を放っておいて、三人が三人正気に戻る前に、小春さんが反応。
「仙蔵くんが好きじゃないんだね。ちゃん」
立花先輩のそのときの顔は面白かった。
くのたま全員が自分のこと好きだと思っていたのだろうか。
私こと、 は面白い人を見つけた。その名前を立花 仙蔵という マル
2009・9・30