声が聞こえました。その声に聞き覚えがあったけれど、
忘れたいと願った私は、無視することにしました。
だって、この思いはもう叶わないでしょう。
小春さんのこと、好きなのに、応援だってしたのに、
恨んでしまいそうなんて、そんなお門違いな思いも、そんな醜さも必要ないでしょう。
それに、あなたは私が嫌いなんでしょう。
それが一番大きなことでしょう。

私・ は、利吉さんに告白されました。
彼の真摯な言葉は、昔、彼にいだいていた思いを思い出たせました。
いいえ、本当は彼が私のことを妹としてみていないことなど、
途中から気づいていたのです。
だけど、私は臆病な弱虫で、彼がとても魅力的なので、嘘だろうと思い込んでいました。
傷つくのが、怖かったのです。
だって、私はすでに傷ついていて、ボロボロだったので、
これ以上は、耐えれなかったのです。
私は彼に気持ちが、とても嬉しくてしょがないのに、
昔に言われたならすぐさま、あなたの元へ走って行って、猶予なんていらない。
といったでしょうね。なんて、私は本当にろくでもない女です。
嫌い、大嫌い。とあなたにこの口がいっておいて、本当は。
・・・・・・やめましょう。
私が滑稽で哀れな姿をこれ以上露呈するのは、私のプライドが許さないのです。
部屋の外からは、誰かの声が聞こえます。
誰の声か集中すれば、分かるのですが、分かって意味があるのでしょうか。
目を閉じれば、いつでもどこでも誰かの顔が浮かびます。

私はいつまで捕われ続けるのでしょうか。
そして、利吉さんはそんな私をなんで好いてくれるのでしょうか。
分からないことばかりなのに、分かることといえば、彼の笑顔を見てみたかったなんて
下らないことなんです。小春さんには見せるのでしょうね。
だって、彼らは愛し合っているのですから。
私たちは、嫌い合っているのですから。一生そんなことはないのでしょうね。

日々いくらか激しい人生を送った気がします。
この学園に来て、悲しかったこと、嬉しかったこと、楽しかったこと、怒ったこと、
色々とたくさんありました。
ですがすべて私の大切な宝ものです。

部屋の中は、すべて片しました。
荷物が思った以上に多くてびっくりしました。
全部、利吉さんの貢物で、ああ、本当に私愛されているんだなって、思いました。
それなのに、私は、まだ好きなんです。裏切りですね。
だから、私はこれ以上あの人を愛していたくないんです。
忘れてしまいたいのです。
そのための行動に利吉さんを使うのはよくないでしょうか?
だけど、私は利吉さんに抱かれても、
妻になってもいいくらい彼のことを好きなのですから、
少し経てば、彼の好きを忘れて、それ以上に彼を好きになって、
愛しているになるのです。
そういうものなのです。
今だけが辛いだけです。
今だけが、別れに涙したくなるだけです。


じっと木の木目を眺めて、私は、息を吐き出した。


さようなら。
私、忘れてみせるよ。そして、愛してみせるよ。







2010・07・04