言っちゃえばいいよ。絶対小春さんの思いは届くよ。
笑顔でいったんだろうね。でも、ちゃんは、どこか寂しい顔して笑った。

そうして、私はちゃんに言われたとおり行動している。
目の前には、無表情ながらも自分に好意を抱いているだろう男性。
ねぇ、ちゃん。
私、脈なしか脈ありかちゃんと分かってるつもりだよ。
これでも、あの時代で誰が誰を好きとか当たったんだよ。
だから、ちゃんも利吉さんとはやくくっついちゃえばいいのに。
ちゃんはちょっと恋に対して臆病だから、
利吉さんが頑張んないと。
今度、利吉さんにあったら、押して押しまくれって言っとこう。
だって利吉さんってば、見てられないほど、ちゃんの前だけ不器用になるから。

「ねぇ、喜八郎くん」

顔の半分を占めている大きな目が私を捉えた。
ドキドキする。きゅーって胸が切なくなる。
あの時守ってくれた背中に恋をしました。

「好きだよ」

そういって真っ赤になって思いを告げれば、
二回瞬きをして、喜八郎くんも私と同じ言葉を返してくれました。
それはとてもとても幸せなこと。
この世界でようやく自分を認められた気がしました。
恋人になった私達は、軒下で、二人肩を並べる。
えへへ。
と顔に似合わず彼のたくましい肩に頭をのせて、彼は目を細めて私を見た。
ふふふ。幸せ。幸せ、幸せなのに、どうしてかな。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

どうして謝ってるのかな私。どうして涙が出そうなのかな私。
胸が痛いよ。すっごく。助けて、喜八郎くん。


本当はね、気づいてたの。それに気づかない振りしてた。
初めてこの世界で私を本当の意味で受け入れてくれた女の子。
みんなどこか、「平成」とか未来から来たとか疑わしげに見ていた中で、
私の未来の話を楽しそうに聞いてくれるとっても大切な親友。
なのに、

なのに、ね。

私気づいちゃったの。私を守ってくれる紫色の顔は可愛い美少女なのに、
背中がたくましくて男の人に恋しちゃったこと。
私を守る彼を、少しだけほんの少しだけ顔を歪めたちゃんのこと。
ちゃんは、きっと私が好きだっていえば、絶対にとらない。
そして、私は彼のちゃんへこのじれた感情にも気づいていた。
今、私を優しく撫でてくれるあなたと私は、恋人になった。
けれど喜八郎くん。
あなたの私の「好き」と私のあなたの「好き」は違ってること本当は気づいてる。

4年生好き=私好きな感情。
嫌い=理性じゃどうしようもならなくなる感情。って

説明したらあなたはどこにいくの?
きっと私のところじゃないんでしょう?
いまはその好きでもかまわない。私を好きで傍にいていつか恋に変わる日まで、
私は知らない振り。分からない振り。見ない振り。
そうして笑う私が優しい?そんなわけない
だって、本物の恋をめちゃくちゃにした。
ちゃんと利吉さんの恋を応援したのだって、
気づいたとき彼が行く場所がないように彼女に無理やり違う恋を押し付けただけ。

ねぇ、ちゃん。
私ね。脈ありかなしかちゃんと分かるんだよ。
だから、喜八郎くんと恋人になれたの。
だから、だからね、お願い。一刻も早く。
彼があなたの思いに気づく前に
私に恋する前に、利吉さんと恋人に。ううん。結婚して彼のそばにいないでいて。

なんて、


私はとっても醜い子。













本当に綺麗なのはあなたなの。
だから、彼もあなたに恋してる。



2010・1・25