気づいてしまえば、なるほどって理解できて、
どうして今まで理解できなかったんだろうって思うくらい簡単なことだった。


三つ編みが解けて、ざんばらな髪がふわりとちゅうに浮いた。
髪は女の命だと言うけれど、別段気にならない。剃髪したわけでもないし、
昔の記憶がある私にとっては、このくらいの髪の毛の方が身軽で楽だなと思うほどである。
ただ、私の髪をみて怒り心頭だったタカ丸さんを除けば、どうといった問題でもない。
敵を捕まえ、お姫様は無事保護。5・6年生の気配もする。
だから、私はすっと闇に消え、明日にはいなくなるだろう相手の場所へ訪れた。
忍たまに捕まれば明日はない。先生に捕まればここにはいない。
その前に問いただしたいことがあったのだ。

「こんにちわ」

すっと彼女の後ろに立った。少しだけ息を吸い込む音が聞こえる。
彼女は、年上の5年生。綺麗な長い髪を垂らして、暗闇の中ひとり正座していた。
彼女は、すぐに首謀者だとは分からないほど気質が穏やかで優しい印象が強い。
現に、私を攻撃した中に彼女は含まれていなかった。
それどころか、停止を訴えた唯一の人物なのだ。

だけれど、今回の首謀者は彼女であると確信をしたのは。

「許せませんか?私があなたの友人を学園から追い出したことを」

最初小春さんをいじめ、あらぬ噂を立てようとしたある人物の計画が
今回の計画に酷似していたからだ。
内容を知っていて、実行に移すほど近い人間は彼女しかいない。
彼女はうつむいていた。その姿は、落ちぶれて醜いというよりもどこか儚いものだった。

「違うわ。あの子は関係ない。ただ、私が許せなくなっただけなの」

「何を?」

「全てよ。彼女の全て、あのお綺麗な顔も、お綺麗な戯言も。
目に入る全て。耳に入る全て。全て許せないの」

「だからと言って学園を巻き込むのは許されませんよ」

「ええ、私はいくらでも罰をうけるわ。さん。
だけれど、私はあなたに言いたいことがあるの」

はて、最後に恨み言でも言われるのか?と覚悟をすれば。
彼女はとても綺麗に笑った。

「私は憎くて羨ましくどうしようもないから、ずっとあの女を見てきたの。
だから、あなたのことも分かっているのよ。
 さん。
あなたは、必ずあの女を憎く思う日が来るわ。絶対よ。
だって、彼女は全てを奪い取る悪女なのだから」


なんじゃそら。


聞きたかったことも聞けたと言うのに、嫌な気持ちだけが残る。
騒がしい忍たまのほうへ帰ると、みんなでお片づけ中。
保健委員が、治療しているけれど、治療している彼らよりも上から降ってくる
彼ら自身の厄によって、彼ら自身の怪我の方が重い。
しかし、彼らは不運という名のものであんなに頑丈な体に出来ている。
何時見ても、彼らの復活は早いし時に死んでも
おかしくない状況で彼らは必ずと言っていいほど生き残る。
もしかして、最強なのではないかと疑っているのだが、穴にはまる善法寺先輩を見て
そんなわけはないかと。ふぅと髪を前にやろうとすれば、すかっとちゅうを切った。
そういえば、髪が半分であることを忘れていた。
首にさっきから当たってむず痒いのはそうか、髪か。
ならば、タカ丸さんのところに行かなければ、さすがにこのままだと外聞が悪すぎる。
あの人は、綺麗な金色しているから夜の中でも光っている。
凄く怒っていたから、なだめるのは難しそうだけど。



「ああ、利吉さん。すいません。今回助かりました」

頭を下げて上がて見る利吉さん、夜でもイケメンだけど、
私を見て、顔を歪めて、

「すまなかった」

と謝った。謝れるのはお門違いだ。利吉さんが来なければ、
私はどうなっていたのか分からなかったのだから。

「あなたは私の命の恩人ですよ。謝らないで下さい」

と言ったけれど、利吉さんは顔を直そうとしない。
どうしたというのだ。髪なんて私。どうでもいいし、
寧ろ髪にかける手間が省けたとかちょっと思ってるし、
なんで利吉さんはそんな暗い顔しているんだろう。

、泣いてもいいぞ」

馬鹿なこと。止めて下さい。なんで私が泣かなくちゃいけないんですか?
私は、助かったんです。生きているんです。
と言いかけた言葉は、利吉さんの胸板によって遮られた。
まったく、聞き分けのない。私は、これからタカ丸さんのところへ言って、
先生に報告と、片付けとか色々しなきゃいけないから、
無理やりにでも腕を解こうとするのに、私の手は力が抜けたように弱弱しい。
なんで?

まさか、そんな。顔をペタリと触れば、ぬるりと温かいものを感じ、血?と思ったけれど
頬の傷はもう止まっていて、色は透明。

なんで?
別に、私は泣くようなこと一つもない。
別に、小春さんが綾部くんの治療していて、二人の間がとても穏やかだったこととか、
ちょっと気づかなかったこと気づいただけで、
そもそも綾部くんは私のこと嫌いだし、私もどうとも思っていなし、
だから、

だから、彼が私を嫌いな理由が小春さんだって気づいただけだというのに。

「私は、の髪が短くても好きだよ」

そんなキザなことをいうこの人には感謝してもしつくせない。
泣き顔とかあんまり見られたくないし、泣いた理由が理由だし。

「私もそんなキザなことが言える利吉さん嫌いじゃないです」

とちょっと笑えたから。
















2009・12・10