しくったなー。
私、 は今敵を相手にしてそりゃもう動きまくりです。
ハイ。こんな軽いノリで言わなくちゃならないほどパニくってます。
事の発端は、何か?
まぁ、昔からありました小春さんへの嫉妬ですよ。
私が色々あった隙を狙われまして、今彼女を絶賛奪われ中。
まったく、くのたまにも困ったものだ。
学園を巻き込む必要はどこにあったのか。
そこまで彼女を憎む必要がどこにあるのか。
終わったら、彼女に聞いてみようと思います。
敵は、中堅ぐらいの強さ。数は学園にいる人数よりも多い。
そしてまぁまぁ賢い。今6・5年が実習に出ていて、先生の不在も多いとき。
他の城の戦を警戒して、出かけられているときを狙われた。
4年が主体で、動いているものの、状況は悪化。
私は、 であり、一忍たまとして、やるべき最善は、小春さんの優先よりも。

すぅっと襖を開ける。
一年は組の塊とそれを守るように中心にいる土井先生に、
囲む数人の敵の忍び。頭である忍びの一人が学園長にくないを向けている。

「手に入れたか?」

「はっ、我ら優勢ではありますが、かの目標物の場所が分からず、
敵、防衛一つでありますが、時間がかかればかかるほど形勢が変わる危険性大。
私は、忍術学園の学園長の大川 平次 渦正を前に出し、敵に戦意を喪失させ、
目標物との交換を提示いたします」

「ふむ。確かに、我らは忍術学園と戦をしにきたわけではない」

「無用な死者などだし、忍術学園と縁深きものの逆襲は避けておきたいもの」

「よし。お前の策を受け入れるぞ」

ばっと胸元から扇を出す。この忍頭は馬鹿じゃあるまいか。
私は、すっと土井先生に目配らせさせ、最初から彼は私だと気づいていたようで、
小さく動いたのを確認し、くないは学園長の首元から離れている。
扇に、採用の文字がバカバカしくて笑えた。

「ありがたき幸せキーック」

私が敵だと分かった瞬間、は組を囲っていた彼らの動きは早いが、それ以上に土井先生の動きが早く、そして良い子の攻撃も早かった。
私は、足を崩した忍頭の首元にくないを押し付け、そのまま縄で足と手を結ぶ。
上に乗れば重い。と一言。乙女に酷くないか?だから力をこめてぎゅっとしてやった。



ちゃんと縛った忍頭の上へ乗り、名前を呼ばれた人物へ顔を向ける。
私の姿は、敵の忍びの姿ではなく、 で、4年の格好に変わっている。
片方の眉毛をあげて鋭い眼差しで私を見る学園長は、現役でないのが嘘のようだ。
周りは、えーいとかやーとかでぐるぐる巻きになっている敵の忍び。
ここを守っていた敵は最初に始末したから。

「報告します。大・小なりとも怪我はありますものの、死者はゼロ。
小春さんはまだ捕まってありません。4年が守っております。
ああ、それと味方が一人こちらへ、5・6年生と先生方もまもなく」

報告を終え、さて次へと思えば。下から吼えられる。

「ははは。こんなこともあろうかと優秀な忍びを雇ったのだ。今頃は、捕まっておろうぞ」

ちらりと、見やればひっと息をつめる。おやおや、小娘の殺気程度に怯えるとは、
本当に軟弱な。でも、罠かも知れないから侮ってはいけない。忍びの三病侮るなかれ。
雇った忍びについてとか、こんなことってお前負けること考えていたのかよとか色々聞きたいが
今は。

「では、私はこれにて」

本当に行きたい場所へと駆けるのみ。


その場所は、簡単に分かった。というか、彼らは忍びとしてどうなのだろうか?
三木と平くんの喧嘩の声が響いていて、
派手な髪をして倒れているのもいる。
4年生は隠密には向かないと、つくづく思いながら、彼らに近づく。

「三木」



「小春さんは?」

「あっちで、喜八郎が守っている」

「分かった」

うん、分かったとかじゃない。やばいよ。三木。知り合いであっても、
そんな簡単に教えちゃ駄目だよ。そして私も聞いちゃ駄目だろうだけど、
三木と平くんとタカ丸さんに、あとで色々言わなくてはいけないことはあるものの。
その声に反応し私をつけてくるものをそのままにし、彼に言われた場所へ急ぐ。

「小春さん」とばっと開けた襖。
そこについと差し向けられた鋤。まあるい目をした彼は無表情に私を見つめている。
これが、本来の忍びの姿だろう。誰が味方か誰が敵か判断しなくてはいけない。
後ろにいる小春さんが、綾部くんの服をしっかり握り締めて、
ちゃんだよ。大丈夫だよ。と言っている。
なんだろうか、当たり前であるこの構図に一瞬だけ、
もやっとしたものがよぎったのは、だから、一瞬判断が鈍った。
後ろからきたクナイを頬に受ける。私は胸元からくないを取り出し、後ろに投げて、
彼らを守るように方向転換。それと同時に、鋤のさきもどけられた。

あー面倒くさいな。利吉さんもまだこちらへ到着してはいないのに。
遠くで、三木のユリコが火を噴く音が聞こえた。
たらりと頬に血が垂れる。私の後ろにいるだろう綾部君に、

「守れ」

そういった同時に横からきたけりを十字にもった二本のくないで身を守る。
じぃーんと響く。ようやく目に見えた忍びは、先ほどの忍頭よりも一癖もアリそしてなによりも強い。
乾いた笑みが出た。おいおい、たかだかおもしろそうなもの盗って来いとか簡単な任務に、
優秀な忍びを雇うなよ。しかも、忍びが!!

暗闇から何度もくる蹴りやくないの攻撃に私は防御一つ。
攻撃が出来る隙がなかなかない。
私の実力では、彼の一瞬の隙を突く以外方法がない。
私が、攻撃してこないことに、格下であると理解したのだろうか、緩んだ隙に、
思いっきり、上へあげるとくない。しかし、攻撃は読まれていたので、やすやすと避けられ、
腹に一発蹴りをいれられたけれど、敵の忍びの腕に刺さる手裏剣。
にやりと笑えば、ようやく目が合い、彼は私から距離をとり、手裏剣を抜いて血を抜く。
毒がついているかもしれないからその行動は正しいが、若さって怖いんだ。知ってる?
急所の場所はくないで守ってそのまま突撃。
普通の忍びならば無鉄砲でしないだろうけど、私は忍びの卵だ。
ちょっとくらい危険な橋を渡らないと、勝負のしの字も見えない。
ぐっと声が聞こえ、力任せに押し返される。良かった。冷静だったら、刺されてENDだった。

「お前、名前は」

「さぁて、ここで終わるような間柄に名前など必要?」

「興味が出たと言えば?」

「は、それは忍びとして?女として?」
ふっと艶を入れれば、彼はくないを下ろす。勝負するきはないと見せ付けている。

「私の仕事は女を連れ帰ること。だから、お前でもかまわん」

実力差はとうに分かっている。
それをじわりじわりと一撃で仕留めないから、そういう性格であることは分かっていたのだが、
まさかここで勧誘。さぁ選べと笑っている男。暗に来なければ私は殺されると言うだけのこと。
あがいて時間稼ぎしてみたものの、あともうちょっとの所で間に合わないようだ。
ちらりと目を向けると、綾部君の大きな目が見えた。その後ろで守られているだろう彼女。
チクリと、棘が刺さった気もしなくもないけれど、私は忍たまであり元くのたま。
一度死んだこの身は、死を恐れて怖がっている。
だから、私は手を取って、そして聞こえた小さな音に、うふふと笑うと、パンと手をはじくのだ。

「ざぁんねん。もうちょっとだったのにねぇ」

目がかっと見開いた敵が徐々に倒れて姿が消えていくかわりに見えるのは、利吉さん。

「ギリギリですよ」

ふっと力が抜けてしまった。そして、小春さんが安心して私の元へ来てしまった。
まだ、ちゃんと利吉さんが到着していないのに来てしまったから、
後ろから現れた敵の一振りに、小春さんを横に押して、
私の体はぎりぎり避けれたものの、
長かった三つ編みは、半分の長さになっていた。



髪を切った敵は、綾部君の一撃をくらって落ちた。
利吉さんも到着。今度こそ、ふーと息を噴出し。

「ギリギリ生きてますよ」

と泣いている小春さんをあやす。



これが、始まりであった。












2009・12・10