「ここね。あの子はここにいるのね、ダーリン」

「そうだね。僕らの愛の結晶がここにいるのさ。ハニー」

仲睦まじく、腕を組んで忍術学園を訪れた男女二人組み。
その現場を、一人の男が見ていた。
正面口に名前を書いているときも彼らはイチャイチャと、
ダーリンの字綺麗。名前も可愛いわ。
いや、ハニーこそ、世界一綺麗で、心も体も綺麗さ。
いやーん、もう、愛してるわダーリン。
と、ハートが乱舞している彼らはどうみても曲者には見えない。
しかし、いちゃつくならば場所をわきまえて欲しい。
このときばかりは表情を少しも変えず、早く書いてくださいと促す小松田を尊敬する。
書いた名前を見て小松田はへーと驚いた顔をした。

さん?ちゃんのお母様かお父様ですか?」

「ええ」

俺は、それを聞いてすぐさま本人がいるであろう場所、保健室へ向かった。
なんでか?
それは、あの両親からお前が生まれたということを否定して欲しいからだ。
曲者の方がまだまし!!!!!
扉が壊れるんじゃないかと思うほどの力で開ければ、4年生と彼女がいた。
中心にいる少女は不思議そうに俺を見上げている。

「潮江先輩、どうしたんですか?」

と、田村が心配そうに俺に声をかけたが反応できずに、
プルプル震える体を地面につけ、正座で俺はの前に座った。

「?えーと」

何と声をかけようか困惑しているに、俺は口を開いた。

「ダーリン。ハニーと言って人前でもいちゃついている方々をは知っているか?」

と、全てを言う前にさっと顔を青くしたと田村。

「逃げるぞ、!!」

「ああ、そうだな。逃げるとしたらお前の部屋か!!」

「僕の部屋の押入れでどうだ!!」

「よし、きた!!!」

と、質問の答えも説明もしない二人は、小声なのにテンションが高く、
本当に、田村の部屋へ賭けこもうとしている二人を、
田村は平が、は綾部に止められていた。

「なにがどうなっているのかさっぱり分からん。落ちつけ、三木ヱ門」

「えーい、離せ。時間は刻々と迫っているんだぞ!!」

「どーん」

「・・・・・・どーん、じゃなくて上からのいてくれるかな?綾部くん。
マジで会いたくないんだって。やばいんだって」

ギャアギャア言っている4人に斉藤が、パァンと手を鳴らした。
しーんとする一同に、彼は笑顔で。

「まずは、説明からお願い、ね?じゃないと、よく分からないよ?」

にこにこと穏やかな雰囲気なのにどうしてだろう、逆らってはいけないと思うのは、
彼らも同じだったらしく騒ぐのを止めて、そろそろと語り始めようとしたが、

「・・・・・・苦しい」

「綾部、それじゃ、話せんだろう」

ひょいと俺がの上に乗っている綾部をどかして、
ようやくは、胸元を治し話し始めた。
は正座をしていたので、どかされた綾部はそのままの膝にごろんと
首を置いて膝枕状態だったが、誰も突っ込まない。
なので、俺もあえて見なかったことにして、話を聞くことに集中した。
いちいち、綾部の行動を気にしていたら身がもたない。特にが関わったときには。
仙蔵に聞けば、綾部は別段を好いているわけではないと言っていたというが。
ここから見る限りではそうは見えない。
ゴロゴロと猫のように甘え、徐々に目が空ろになってきている綾部。
彼は本当にが嫌いなのだろうか。むしろ・・・・・・・・・・。
いや、元々綾部はよく分からないことのほうが多いので、独特なのだろう。

「というわけで」

・・・話に集中していたと思ったが俺もまだまだ修行が足りない。
なんだかんだいって、綾部との関係が気になって話を聞いていなかった。
だからと言って聞いていなかったのは、俺が話を振っておいてそれは失礼すぎる。

「へーじゃぁ二人はちゃんの両親なんだ」

ナイスだ。斉藤。ただの金髪でヘラヘラしただけの男じゃない!

「そうなんだ。彼らにはさっきも言ったように悪癖があって」

言葉を続ける前に、後ろから大きな声が響いた。


「ハロー!!ちゃん」

「僕らの愛の結晶!!元気かい?」

ニコニコニコ、まさか俺が気づかないとは。と、目を大きくしていると朝倉の母上と目が合い。
がっと顔を掴まれた。

「まぁーー!!この子がちゃんの恋のお相手?
隅がちょっと強いけど、なかなか可愛い子じゃない、ダーリンには劣るけど」

「ははは、ハニーそんなに、惚けないでおくれ。恥ずかしくなってしまう。
でも、この子なら安心できそうだ。浮気は出来そうにない容姿と性格だと僕は見た!!」

「いやーん、ダーリンの千・里・眼!!もう大好き」

俺の顔を離し、ぎゅっと男の方に抱きつく。
なんなんだ、これは。そして初対面でなぜこんなことを言われなければ。
段々と苛立ってきたが、彼らはもっと大きな爆弾を落としてきた。

「あ、じゃぁ、ここの婚姻届にぎゅーってしてね」

はい、と婚姻届けと書かれているところにぎゅーと凄い力で拇印を押された。
苛立ちよりも唖然。

「きゃーこれで一安心ね、ダーリン」

「ねーハニー」

と笑いあう小鬼にが立ち上がった。

「お待ち下さい。母上、父上」

「あらーなに?ちゃん」

「よく、見てください。ここにはこんなに男がいるではありませんか!!
一人ではなくみなにとるべきではありませんか?」

・・・・・・さっきまで頼りになると思っていた俺は消えてしまえばいい。
何言ってるんだ。と叫ぶ俺の口を塞いで、ものすごい笑顔でが言った。

「私はみんな大好きです!!」

その言葉に普通の両親ならば怒るだろう。
尻軽とかなんとか、一人にしろとか、慎みがないとか、しかしの両親は違い。
凄い笑顔で喜んだ。

「まぁまぁまぁ!!こんなにいるなんて、さすが私の子供ね。愛されすぎるって言うのは罪!!
私も若い頃は凄かったけど、ダーリンに会って、私は変わったのだったわね」

「そう、ハニーは敵国の忍びで進入してきて、僕は忍び頭だった。運命に引き裂かれるのならば」

「「運命なんて捨ててしまえ!!」」

二人の世界を築き上げている二人を放って、

「よし!いまだ。さっきの紙ゲット!!」

はさっきの紙をとって、そのまま燃やした。

「ふー、危ない所でしたね。先輩。
これで前、本当ギリギリまで行ったときもあって、
大概まだ私を好きな人はいるっていえば、こんな感じで世界に入りますから」

「ああ、本当に、あの時はやばかったな。次の日祝言とか言われて、
勝手に進んでいたからな。僕はあの時の恐怖忘れていないぞ」

「・・・・・・私もだ。三木。まさか、9歳で結婚だなんて、あれは驚いた」

「「二人の愛は永遠よ・だ」」

「そろそろ、終わるな。おい、みんな逃げるぞ!!」


その日はみんなどうにかして逃げれたが、
まさか彼らが2・3日泊まるということは誰も知らなかった。

恐怖か、チャンスかここからはじまる。









2009・11・17