は体力・気力ともに弱っていたので、
保健室でお泊まりになった。
利吉さんは、彼女は放っておくと自分のことなど省みないから。
と言ってを布団に寝かせつけ、今度のことは私の責任だからと言って看病している。
小春さんが、私が看ると言っても、
小春さんは、事務員とか食堂の手伝いがあるでしょうと笑顔の利吉さんに一括。
私にも責任はあると言った鉢屋先輩には、
どちらかというと私が迷惑をかけてしまって、授業もあるのだからそこまで迷惑はかけれない。
と空気をくみ取らない申し訳なさそうなに一括。
ああーもう、ムカつく。
が利吉さんに懐いているのも、
利吉さんがを独り占めするのも、
僕は、が言った後に、利吉さんがニヤリと笑った姿を忘れない。
あの人には、裏があるんだぞ!、気をつけろと言ったところで、
彼女に危機感の元が分からないので、言っても意味がない。
裏って?ああ、確かにあの顔で山田先生の息子ってことは未だに理解し得れない。と言われた。
お前は、狙われているんだよ。確実に。と言ったところで。
ないない。あのイケメンが私に手を出す意味が分からないし、
あの人妹ぐらいしか見えてないよ。と返ってきた。
なんでおまえはそうなんだ。恋に鈍い滝夜叉丸や潮江先輩でも分かったのに。
だから、僕らは休み時間のたびに監視することにした。そして、夜も。
というか、なぜ奴は夜まで一緒にいる?
先生方も男女一夜というのをなぜ許しているのだ?
「に手を出したらユリコが火を噴くぜ」
「待て、なぜ何もしてないうちから、
火を付けようとしている。三木ヱ門落ち着け!!」
「離せ!!滝夜叉丸。と奴が同じ空間にいるだけで孕んでしまう!!」
は、孕んでしまうとは破廉恥なと喚いている滝夜叉丸。ウザイことこの上ない。
そんな僕ら二人にタカ丸さんが一括。
「二人とも静かにしてよ〜ばれちゃうでしょう?ほら、喜八郎くんを見習ってよ」
僕は、一人静かに鋤をもってじぃーとと利吉さんを見ている喜八郎に、気持ちを落とした。
幼なじみである僕の心配からの気持ちと、
たぶん恋であるだろう喜八郎のへの気持ちに優劣は付けられないけれど。
あの時、を戻した喜八郎に僕は確実に負けていた。
僕はだから、泣くことしかできない僕よりも頬を赤く腫れるまで殴って
彼女を戻した彼のほうが上だと思うのだ。
その彼が静かに見つめているのならば、
僕も静かに見つめることしかできないではないか。ああ、あのでかい月に吼えたい。
糞ヤロウ!!さっさと学園から出てけ。に触るな!!
「静かですね」
「・・・・・・そうだね。そういえば、に聞きたいことがあったんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「『月が綺麗ですね』」
利吉さんに言われた言葉に声を詰まらす。
なぜそれを。というよりも言葉の本当の意味を知っている私は
まじめな顔で言ってくる利吉さんに顔が赤くなる。
「って、どういう意味?」
と笑顔に変わった利吉さんに息を吐き出す。
良かった。良かった。私はこの人にとって妹でしかないという確定を疑ってしまう所だった。
ほっと息をついている私に利吉さんが複雑な顔をしていたことなんて知らずに私は
起こしてあった体に膝を立ててた自身の膝に顔をうずめた。
「それはですね。とても多い言葉の持っている人の最後の常等文句なんですよ。
『月が綺麗だね』は、『貴方といるから今日の月は一等綺麗に見えます』
ってね。つまり。愛の言葉です」
ここではあまり使わない方がいいですよ。と、ニの言葉を告ぐ前に利吉さんが口を開く。
「私は『進一さん』にはならない」
「ハハハそうですね。彼にはならないでしょう」
あなたは、私のことを愛さないだろう。それを言われてちょっとはチクリとするけど、
当たり前なことだから。私は、苦笑する。
けれど、利吉さんは私の手を取った。
「私なら絶対殺させない。殺してでも傍にいる」
と、掌に唇を落とした。
・・・・・・うっわーキザ。この人恥ずかしくないのかな。
言われた私が顔が赤くなるほど恥ずかしいのに。
パタパタと手を振って顔が赤いのを収めようとして、
利吉さんに取られた手を元に戻そうとするけど、
あ、れ?
利吉さんから手が抜けない。離してくださいと顔を見合わせれば、
利吉さんの鋭い眼光が私を射抜く。逃がさない。離さないと。
「、私は」
ドクンと、一回凄い速さで心臓の音が聞こえた。
「ちゃん、利吉さん。こんばんわ〜」
ぽっと手を離されて、私は手を胸元まで持ってくる。
なんだ。今の。なんだ。今の。
ぐるぐる回る。
「ちゃん、利吉さん。こんばんわ〜」
場の雰囲気に合わない間の抜けた声が響いた。
チッと舌打ちしたい気持ちを抑えて、笑顔を向ける。
「おや、斉藤くんだったね?何かようかな?」
最初からいることは知っていたけれど、ここで邪魔するか。お前という目を向ければ。
「いや〜ちゃんのことが心配でみんなで尋ねにきたんですよ」
ほわほわ口調で、目だけ鋭く。
だ・か・ら、邪魔っていうんでしょう?ちゃんは簡単にあげないよ。
と返された。いい度胸だ。
後ろではまだ赤い顔をしたがいて、食べてしまいたいほど可愛い。
お前らに見せたくないけど。もう、見ているか。まぁ、見ている前で奪おうと思ったのに。
ぞろぞろと出てくる四年の中に、大きな目を見つけて、
君の見ている前でさっさと奪いたかったのに。と小さく呟いた。
代わりに返ってきたのは。
「じゃぁ、今日はみんなでお泊り会しようか〜。えへ〜僕こういうの初めてだから、楽しいなぁ」
といつのまにかと喋っている一方的で否定を許さない斉藤の声だった。
「二人だけじゃ、危ないからね」
「ん?ああ、タカ丸さん。それはないない。利吉さんと私がそうなることは万が一ない」
「へー、万が一ないんだ」
「万が一ない」
何回も言わせなくても分かってる。なぜそこを強調させる?
「じゃぁ、二人は恋仲じゃないんだね?」
「ああ、ありえない」
なるほどね。と斉藤はこちらににっこり笑い返した。
・・・・・・・斉藤 タカ丸、本当にいい根性している。
2009・11・5