1・
大なり小なり愛というものを示せば答えてくれるものだと思っていた。
私が天才だったからかもしれないが、私が可愛くて美しかったからかも知れないが、
私が示せば、誰もが反応を示してくれていたのでそうだと思っていた。
私は優秀で美しく可愛く、つまるところ完璧と言う言葉しかないくのたまだ。
名前は、。平凡な名前だけれど、全て完璧すぎるのも
品癪を買ってしまうからそこぐらいは大目に見よう。
そんな私に愛された幸せボーイは、田村 三木ヱ門。
顔は私に劣るもののいい顔してるじゃないの、としか思っていなかったのだが
10キロソロバンが私に当たったのが始まりで、彼はその後、私にとても優しくしてくれた。
つまり、彼は私が好きなのだ。ふふ、罪深い私だ。
愛には愛で返そうというのが信条である私は、彼に大声で好きだと叫ぶ。
そして、行動。抱きつく。彼の体は硬かった。綺麗な顔に綺麗な体ますます好みだ。
私が愛を言うたびに、赤くなって怒るのは照れているんだろう。
私が抱きつくたび、離れろと言うのは照れているんだろう。
ふふ、可愛いシャイピュアボーイ☆だ。
私は今日も今日とて愛を叫ぶ。
「田村 三木ヱ門。好きだぞ」
「あーもう、なんでお前は毎日毎日僕にまとわり付くんだ。迷惑だ」
「フフフ、そんなことを言って、そこまでツンが続くとなれば、デレのとき、
どうなるか楽しみだ」
頬をツンと突くと、あーもう、と立ち上がりどこかへ行こうとする。
私は後をつけて、ニコニコ笑顔で、みっきえもん、みっきえもん〜♪と歌う。
プルプルと震える肩についに三木ヱ門がこちらを向いて赤い顔で怒鳴った。
「本当に、なんなんだお前!!」
「!!花の乙女だ」
「違う!!」
本当に照れ屋さんだ。
愛を示しているのだから、さっさと愛を返してくれればいいのに、
いやもしかして、私を好きだと言ったら、美しく完璧な私が飽きて捨ててしまうとでも思って
言わないでひきつける作戦かもしれない。ふっ、馬鹿だな。三木ヱ門。
お前を捨てるわけないだろうに。一日・一日、言葉で行動で愛を示し、
こんなに一緒にいれば、お前の良い所とか嫌な所とか全て見てきたんだ。
それでも、愛を示しているんだから、「好き」なんだ。
「心配するな。私は捨てないから!!」
「僕はお前の頭が心配だ!!」
2・
私に似合う色?そんなの分かるだろう?
朱色の色。女を艶やかにする色。
私はこの色が好きだから、いたるところこの色ずくめ。美しい私をなお美しくしてくれる。
だから、
「今回の失敗は、朱色が悪いのだ。私に似合う色がなお私を美しくさせ、
敵を惚れさせてしまい、まさか閉じ込めようと思うほど私を好くとは、怖いものだな。
私の美しさ」
「うん、お前が怖いわ」
ガンと、上から降ってくる拳に私は頭を痛めた。
「何をする。秋穂。私の賢い頭がかわいそうなことに痛いと泣いているではないか!!」
秋穂は、とても身長が高い女だ。そして怪力で、口が悪い。
顔は見れないことはないが、お前の力はゴリラ並だぞ。
「いや、ちょっと死んできて、マジで。お前の頭は最初からかわいそうだ!!」
「何をしているのです?秋穂。可愛い私のが、痛がっているじゃないですか。
賢い頭が馬鹿に毒されて、かわいそうに」
すっと、私を包み込む豊満ボデイ。彼女は、雹。私の一番の信望者だ。
愛を示せば、数百倍愛を示し返してくれる。
完璧すぎる私に嫉妬することのない、素晴らしい彼女は、私に劣るものの、
白い肌に大きな垂れ目。長く真っ直ぐな美しい髪。外を歩けば男に告白される。
私は完璧すぎるから、なかなか男は近寄らないけれど、
彼女が私に劣るものの美しく可愛いと思う。
「おい、雹。今日という今日は許さないからな。いくら雹がフォローしてるからって、
今回は殺されかけたんだぞ。この馬鹿のせいで」
「何を言ってるんですか?秋穂。今回は、私の可愛くて美しくて賢いが糞忌々しい敵兵に
攫われそうになったんですよ?それを許す許さないではなくて、祝うのでしょう?
こんなに可愛くて美しいのだから、本当今この瞬間に攫われないのがおかしいのですよ?」
「祝えるか!!ってか雹。お前がおかしいことにそろそろ気づけ!!
敵は敵だから捕まえようとしただけで、お前がが好きなのは痛いほど分かったが、
こいつ平凡で普通でどっちかというとドジだろう?」
「フフ、嫉妬は醜いわよ?秋穂」
すっと、秋穂の首元に雹がクナイを添える。
目が笑っていない。しょうがない女だな秋穂。雹を怒らすなんて。
私は賢いから、ここでフォローが出来る。ポンと雹の肩に手を置く。
「二人とも、私のために争うな。雹。そのクナイ仕舞え。
いつかこんな日が来ることは分かっていた」
秋穂は、少しだけ顔を顰めて、雹はクナイをゆっくり落とした。
「ちょっと、言い過ぎた悪いな」という秋穂の言葉は、の。
「だが、完璧であるということはこういう嫉妬にも立ち向かわなければ」
と握りこぶしをもち、腰に手を当てた彼女によって途切れた。
「素敵です!!」
「ちょっとでも、後悔した私が馬鹿だった!!」
3・
「好きだ」と言う言葉を何回言っただろう。
「好きだ」と言う態度を何回行っただろう。
積もり積もったそれらは、ゴミ箱に捨てられることなく、大輪を咲かせた。
とても大きな花で、綺麗な花だったので、手放すことなくどこへ行くにも共に一緒だった。
今日も、彼と私は二人で、愛を紡ぐ。
夕暮れが綺麗で私の好きな朱色。
横にいる彼は私のいつも以上の美しさにやられてしまっているだろう。
仕方がない。私は完璧で美しく可愛く何をやらせても失敗などないのだから。
今日だって、私のお気に入りの簪がしゃらんと鳴る。
「三木ヱ門、好きだ」
何回目の好きだろう?でも、フルネームから名前で呼ぶまでになるほど何回も言い続けた。
彼は、顔を赤くして怒ることはしないで、私の顔をじっと見た。
なんだ?
「完璧な私にとうとう愛を言う気になったか?」
はーとつかれたのはため息。なんだ、それはあんまりよくない反応だ。
前の顔を赤くしてツンだったときのほうがいい。
「なぁ、。お前、ずっと言おうと思っていたんだが」
吉野なんて他人行儀な、でいいと言う口は、ずっと言おうで止まった。
とうとう彼が私に愛を囁いてくれると思ったからだ。
当然だ。完璧な私がここまで愛しているのだから、彼が一つも愛を返さないことなどない。
絶対の自信は、彼の一言により全て崩れた。
「それ本気で言ってるのか?」
それとは、なんだろう?分からない。三木ヱ門が言わんとしていることが少しも分からない。
私の顔を見て、三木ヱ門は、呆れたように言う。
「お前のどこか完璧だ?綺麗だとか可愛いとか、普通自分で言うか?
滝夜叉丸みたいだ。だけど、滝夜叉丸は嫌な奴だが、それを言えるほどの実力と容姿がある。
、お前は、普通だろう?それと、前の任務失敗したと聞いたぞ?
その失敗はお前が足を引っ張ったせいだと、お前は自分に慢心しすぎではないか?」
何を言っているのか、一瞬分からなかった。パチクリ。
え、私完璧だし、綺麗だし、最高だし、なにそれ。
『平凡』って何?嘘言わないで、嫉妬しないで、言おうとしたけど、完璧なはずの口は開かず
三木ヱ門の口だけが開かれる。
聞かされるのは、いかに私が失敗したか、いかに私という人物が完璧じゃないか。
全てが終わったのはいつだっただろう。
私は話を全部聞いてから立ち上がっただろう。
全然覚えてない。覚えているのは、そう私の完璧が否定されたと言うこと。
そんなはずはない。
きっと私の完璧さに自分の平凡さが悲しくなっていってしまった戯言だと、思うのに。
ドンとぶつかったのは、三木ヱ門の友人達。
私は、今日はなんだかとても疲れたので、すぐ眠りたいから、何も言わず帰ろうとすると
手を掴まれた。
「、これ以上三木ヱ門に近づくな」
近づくなって、なんで貴方に言われなくちゃいけないの?
このナルシスト。
「任務で男を落とせって言われてるんでしょう?でも、やりすぎ」
任務?なにそれ。知らない私。
あなたとても綺麗な顔をしているのね。あら、貴方の目に映っている平凡な子は誰?
「あれじゃ、三木くんが可哀想だよ」
何が可哀想なのか分からない。
ただ分かるのは私は三木ヱ門の鍛錬とか日常とかで邪魔だと言うことだけ。
そして、彼らはとても美しいというだけ。
「それから、その簪似合ってないぞ」
私は簪をたたきつけた。
どこかで、はらりと花が落ちる音と共にシャランと音を立てて綺麗に壊れた。
4・
そんなはずはない。と勇み足で雹を探す。雹ならば私のことが分かるからだ。
彼らが私よりも綺麗とかそんなの世迷言で私が平凡であるなんて間違えだって、
「あ、あの、雹さん。僕と付き合ってください」
タイミングが悪い。雹は誰か知らない男に告白されていた。
さっと隠れてマジマジと見て、ああ。と急に理解する。
私は、男にあんなに熱い視線で見られたことはなかった。
白い肌に、長い髪が、風に遊ばれそれを綺麗な仕草で直している彼女は、
一枚の絵のように美しく、胸も尻もでるとこでている。
胸をペタリと触ると、男か女か微妙なラインの自分の体。
なんだ。そういうことか。遠くからもう一度雹を見る。
とても綺麗な女性で可愛い女性で、あの簪が似合う女性だった。
歩けば穴につまずいて、最悪な気分なまま泥を拭うため池に付けば、
泥だらけで普通の女の子が映っていた。
私の想像していた私と違くて
ちっとも綺麗じゃない、ちっとも可愛くない、ちっとも完璧じゃない。
「?」
池に映る私の後ろには気の強そうなでも、私よりも綺麗な少女が立っていた。
「秋穂」
私の姿に驚いて手ぬぐいで拭く。
「おい、どうしたんだ?お前の完璧な顔がぐちゃぐちゃじゃないか」
「完璧じゃない」
「は?」
「秋穂。私平凡だ。秋穂よりも雹よりも綺麗じゃないし、任務だって足引っ張り放題」
「おいおい、どうしたんだよ。」
「言われて気づいた。男が告白するのは大概、雹で、秋穂で、
ナンパだって、私されたことないし、朱色の簪はまったく似合ってなかった」
「お。おい」
「ごめん、秋穂。私、部屋で寝る」
5・
綺麗な朱色の簪。単品であれば、どんなに趣味のいいものか分かる。
いきなり地面にたたきつけられ壊れたそれは、本人の傷つき具合を表しているようで、
胸が痛む。
「まったく滝くん。一言多いよ。怒っちゃったじゃないか。あーあ簪ボロボロ」
う、しかし。
「わ、私が悪いのか?私はただ似合ってないと正直に言っただけだ」
「いいんじゃない。似合ってないし、これで三木のところ来ないでしょう?」
そうだ。彼女の格好は、朱色の簪だけが浮いていて
いつも変だと思っていたから親切でいってやったんだ。
それに、いくら任務と言えども忍たまが餌食にされる姿は見ていて楽しくない。
此の頃、疲弊してきている三木ヱ門の姿が哀れだとかそんなわけではなく、
この滝夜叉丸のライバルとして、あんな姿は不甲斐ないというそんなもので、
だから、最後に見せた彼女の表情に胸が痛んでいるのは間違えだと、頭から消そうとすれば。
後ろかひんやりとした空気を感じた。
「あら。そのお話。ゆっくりじっくり聞きたいわ。ねぇ、秋穂」
「そうだな。お前らのところにある壊れた簪の内容もじっくりゆっくり聞かせてくれるだろうな?」
の友人達は、一人は凄い笑顔で、一人は凄い怒りに満ちた顔で
私達にことのあらすじを説明させた。
「くのたまの任務の内容を知っていたタカ丸さんが、
友達へのちょっかいをとめて欲しかったとなるほどね。
あなた達馬鹿でしょう?」
「ああ、本当に馬鹿だな」
鼻で笑われて、ムカツク。私が馬鹿だと?
横にいた喜八郎も少しむっときたのか言い返す。
「いきなり好きって言われればそう思う」
彼女たちの顔は相変わらずの呆れ顔。それを色濃くさせただけだ。
「馬鹿ねぇ。そんな任務、知らない男を狙った方がいいじゃない。
学園に、居難くなること私達がすると思って?それに、
は任務忘れていたわ」
「「「は?」」」
みんなの声が重なった。
「はな、こう、一個のことしか出来ないからな。忘れて補習受けてたし。
お前らな、くのたまでって言えば、
任務を一回もまともに出来たことがないと言われるほどなんだぞ?
それが、任務のために男に近づくなんてそんな立派なことできるわけないだろう?」
なんだそれ。そんな有名な駄目なくのたまっているのか?
いや、まてよ。それが本当ならば。
タカ丸さんが額に手を当てて混乱している。
「えーと、それって、つまり?」
「はいつも真っ直ぐで、真正面で嘘なんてつかない可愛い子なのよ!!」
「・・・・・・はやとちり?」
喜八郎は大きな目で私に同意を促すが。
「・・・・・・え、じゃぁアレは本当に愛情表現なのか?」
「それにあの朱色の簪は、お気に入りだ。似合ってなくてもな。
本人が似合うって思ってるんだから、余計なお世話だろう。まぁ、まず」
「「お前らを地獄にオトス」」
それ以降のことは口にしたくない。ああ、でもどうやら私達がしたことは、
恋している少女を邪魔しただけだと言うこと。そしてそれがとても傷つけてしまったこと。
今度会ったなら謝らなければ。そして簪はちゃんと似合うやつをあげておこう。
6・
目が覚めれば、二人が心配そうに私を見ていた。
「?」
「雹、秋穂?」
「あ、あのね、はとても綺麗だし可愛いし完璧よ?」
「ああ、時々仕草が妙に可愛いと思うぞ」
「うん、いいんだ。雹、秋穂。私はちゃんと理解した。鏡だってちゃんとふいて、
ちゃんと確認した。だから、なぐさめなくてくれていい」
「・・・・・・・」
「私は完璧じゃないし、平凡だ。雹みたく綺麗じゃないし、賢くないし、でるとこでてないし、
秋穂みたく、実技に強いわけでもない」
雹がなにか言う前に、秋穂がなにか言う前に私は拳を振り上げて言う。
「だから、私は努力しようと思う。綺麗じゃないなら綺麗になって、賢くないなら賢くなって、
実技だって頑張るし、完璧な私を私が作り上げていく!」
だって、完璧じゃない私は私が嫌だから。完璧じゃないならなるまでだ!!
と言えば、雹が泣いて抱きついてきた。胸で圧死する。
「、素敵すぎます!!」
「だから、二人とも私の完璧に手伝って!!まず、雹。勉強と美容。
で秋穂はゴリラになる方法を!!」
ビシっと秋穂をさせば、怒ったけれど、どこか安心している顔があった。
私、完璧になる!!
7・
「このごろ、来ないと思わないか三木ヱ門」
「誰がだ?」
「だ」
確かに、最近を見ない。
うるさくてうざいだけだったし、もう一人の滝夜叉丸がいなくなって、
こちらとしては清々したという気分だが。
「こう、急にパッタリ来ないとなると心配だよね。ねぇ、三木くん」
「まぁ、そうですね」
忍びの世界だから、もしかしてがあるけれど。
くのたまと忍たま離れていても噂は入ってくる。そういう話は聞いてないし。
あ、今日の魚上手い。
「ねぇ、三木。いいの?」
もう食べ終わっている喜八郎が私を覗き込むように聞いた。
「なにが?」
「いいなら、いいけど。知らないよ?」
よく分からない中途半端な言葉のせいで、気になってしょうがない。
そして、噂をすれば影とでも言おうか。丁度目にが見えた。
おい、と声をかけようとする前に、目に入っている二人の男の会話が聞こえた。
「お、じゃん」
「ああ、有名な駄目くのたま」
「いやいや、このごろ頑張ってるらしいぜ。それにさ、
あーゆう、毒もなくちまちま動いている姿ってーの?
なんか癒しっていうか。可愛いっていうか」
「はぁ?普通じゃね?」
「なんか完璧とか言わなくなったしあの変な簪してなければ、
結構可愛いって、ほら、よーく見ろよ」
「・・・・・・あー分からなくもないような」
不愉快だ。
は、急に僕に好きだとか言って、ウザイし恥ずかしいし、
完璧な私に恥ずかしがっているんだろう?って変なことばかり言っていって、
それなのに、急に消えて。さっぱりしたと思えば、なんだ?
なにをしたいんだ?お前は。
不愉快だ。真にもって不愉快だ。
なんの理由があって、僕をぐちゃぐちゃにかき回してるんだ。
8
「あーうう」
苦しい、きつい、息が出来ない。
今日もゴリラこと秋穂の筋トレと言う名の地獄に耐えた。
「ふーうう」
痛い、分からない、泣きそうだ。
今日も完璧な雹の勉強と言う名の地獄に耐えた。
「ひゃうぅぅう」
足りない。足りない。
それどころか、今までよくも完璧だと思えたな馬鹿と思うほど私はボロボロ穴だらけだ。
筋肉痛。知恵熱、打撲、その他もろもろの傷。
全部抱えたけど、今日実施のテストはボロボロだった。つまりドベ。
前なら、嫉妬だけど、今は完全私が実力不足。
そしてそのまま、穴に落ちた。一生懸命訓練してるけど、本当に進んでいるのだろうか?
進んでいるのは、不幸の保健委員への道で、保健委員と好感度ではないだろうか?
綺麗、可愛いにほど遠い顔に、一生懸命基礎をほどこしても、平凡は平凡だ。
ふあー疲れた。眠いよ。痛いよ。
でも、今日のテストの何がいけなかったかちゃんとしなければ。
完璧になるんだ。私は完璧に。
何百回目のクナイを的に投げた。
ゆるやかな軌道はまるでそこだけ避けるかのように的から外れた。
まるで空まわり。頑張っても駄目?
9
「なにをしてるんだ?」
「うわぁぁぁ!!!!」
此の頃訓練をしていると言うのは嘘ではなかったようで、
変な鳴き声が聞こえる場所へ行けば、ボロボロなって、クナイを投げているがいた。
声をかけたら、案の定こんなに気配バレバレなのに気づいてなかったようだ。
こいつは本当にくのたまだろうか?
久しぶりに会ったは昔のようにドーンと僕のところへ来ず、
来るなと言っていたあのころが嘘のように、僕を見るなり逃げ出そうとする。
逃げたから捕まえた。前よりは早くなったが、簡単に捕まえられたはそれでも暴れて
「は、離せ!!」
と僕が言い続けた言葉を言うものだから、むしゃくしゃとムカツイた気持ちが爆発して。
そのまま放り投げた。彼女はかろうじて受身をとったものの、尻を殴打したらしく
痛った。といって涙目で尻をさすっている。
「なんなんだよ。お前は!!」
僕は叫んだ。ここのところ、気分は晴れないし、
ちょっとでもお前の名前が聞こえただけで、そいつを殴り飛ばしたくなるし、
僕のところに来なくなった代わりに保健委員とは仲良くなってるし、
お前は、僕に何をして何がしたいんだ!!
くっつかれてウザくてしょうがなかったあの時よりも、いなくなって清々した今の方が
お前のことばっかりで、イライラするんだよ。
「なにがしたいんだよ。僕に」
「なにがって、私は残念なことに完璧じゃないと気づいたんだ。
綺麗じゃないし、可愛くないし、賢くないし、任務でも失敗ばっかりで、ドベだ。
それにつるぺったんな体だし」
涙目だった彼女はおらずこちらを真っ直ぐ見ている彼女がいる。
その姿は平凡とはかけ離れている姿だった。
「完璧じゃないから、三木ヱ門は私を好きだと言ってくれないのだと思ってな、
だから、完璧になれば三木ヱ門は私を好きだと言ってくれると思ったんだ。
すまない、迷惑ばかりかけていた。少し待っていてくれ、私は完璧になって、
また三木ヱ門のところへ好きだというから
待っていてくれ」
と、行こうとする彼女を無意識に捕まえて、
僕は本当に聞きたかったことじゃない質問を投げかけていた。
「まて、お前が僕を見て逃げた理由は」
「不完全な状態で会えないだろう?だって、私は」
こけたんだろう泥だらけで、クナイの先端で切ったんだろう怪我だらけで
何時間練習したんだろう髪だってぐしゃぐしゃ。だけど。
「私は三木ヱ門が好きで好きでしょうがないから、
会ったら、完璧じゃないまま飛びつきそうだから我慢してるんだ」
そういって、笑う彼女は、この世で一番綺麗で可愛い存在だった。
顔が徐々に赤くなるのが分かる。
僕は、彼女の好きが嘘だと思っていた。
急に言うし、急に消えるし、ままごとの遊びに飽きたみたいなものだと。
しかし、彼女はずっと本気で、そのことだけでも火が吹きそうなのに。
彼女は、僕のために頑張ってくれている。
うわー、うわー。さっきまでのイライラとかむかつくとか一気に吹っ飛んで
胸のなかが温かくてドキドキする感情。
飛びつかないなら、僕から飛びついこう。
ぎゅっとすればふぇっと胸のなかから声がした。耳まで真っ赤だ。
あーもう、なんでこんな可愛いんだろう。
「だったら、もう会いにきても大丈夫だ。寧ろ完璧じゃなくていい。心配でしょうがない」
お前がこれ以上綺麗になって可愛くなったら、敵が増えてしょうがない。
「え、え?」
まだよく分かっていない彼女の顔をちゃんとみたくて名残惜しいが胸から離す。
「僕も好きだってことだ」
その後、僕の可愛い彼女は滝夜叉丸から簪を貰っていたので、
砕いて捨てた。何をするって言うから、お前、何送ってんだよ。
これ以上可愛くなったら困るだろう?前みたいな簪とかないか?
とか、ちょっとぐらいと頑張る彼女をちょっと邪魔してみたりとか、
だってさ。なんかこのごろメキメキ可愛くなって、男の目に入っただけで
攫われるんじゃないかって心配してるんだ。
それほど、可愛い完璧な僕の彼女。