自分には、という完璧無欠の愛しい彼女がいる。
だけど、彼女はこのごろ、他の男に目を向け過ぎじゃないだろうか。
潮江先輩とか善法寺先輩とか馬鹿ナルシストの滝夜叉丸とか。
いくら言っても彼女は、妄想だよとか、考えすぎだよ。
私モテたことないんだよ?と胸を張っていってから、ちょっと落ち込んでた。
そんな姿も可愛・・・いや。話がそれた。
それならば、と僕は思った。
いくら相手に言っても駄目ならば、僕がいなくちゃ駄目になるほど、
おとせばいい。ちなみに、アドバイザーは、立花先輩だ。
立花先輩は、ふむ。と一回顎に手をやってから、

「ヤキモチを焼かせて、縋ってきたところで慰めればいいと思うぞ」

そう教えていただいた僕は、すぐさま実行した。
ちなみに、その後の、

「まぁ、の性格から言えば、それは失敗だろうだけどな。
あれは、いつでも嫉妬しているし、自分に自信がない。
そんなことすれば、落ち込んだ所に、
待ち構えていた奴らが、こぞって来るだけだ。
すまないな、田村。
私は、後輩より、友人の恋の方を応援しているんだ」

と、いうことは僕は、まったく聞こえていなかった。
僕は、恋人の完璧なよりも、
ちょっと劣るものの愛していることに変りない火器のユリコに、
のいる前で、愛を叫んでみた。
は変な顔をして、僕から視線をそらした。
・・・・・・失敗。
じゃぁ、サチコに。
・・・・・・失敗。
じゃぁ、サチコ二世。
・・・・・・失敗。

僕の持っている愛すべき彼女たち全員に愛を紡いだときに、
は最後に

「三木ヱ門って本当に彼女らを愛しているのね」

と言われた。
嫉妬とは程遠く、なんでか嬉しそうな顔をしていた。
どうやら、は並大抵なことでは嫉妬してはくれないようだ。
どうするかと悩んでいるところに、滝夜叉丸。
まったく騒々しくてしょうがない。
しかも、こいつまだのことが好きだとか、はやく死ねばいい。
滝夜叉丸に、悪態をついてると、キャキャと声がして、
見てみれば、男を周りに、従えたまぁまぁ可愛い女がいた。
まぁ、アイドルたる僕は美しいし、僕の彼女は、死ぬほど可愛い。

「天女さまじゃないか」

「なんだとうとう頭が湧いたのか滝夜叉丸」

天女なんて、どうみても僕の以外に当てはまるけがないだろう。
おまえ、本当そんなんでが好きだとか、やっぱり死ねよ。

「・・・・・・お前、いまかなり失礼なこと思わなかったか?」

「はぁ?被害妄想キモ」

「・・・天女さまというのはな「キャァァアアアアアアア」」

滝夜叉丸の言葉を遮って、女の叫び声。
何だと思えば、その天女さまが、僕を指さして、叫び、顔を赤く染めて、
それから、凄い速さで僕の手を取って。

「私よ。私、覚えてるでしょう?」

「失礼ですが、初めて会いました」

「え、覚えていないの?」

頭のイカレタ女は、僕の言葉に顔を青くさせた。
僕は、なんのことか分からないけれど、初対面で、手を握られた不快さに、
手を払って、

「初対面です」

と、釘をさして、そのまま放置しようとしたけれど、

「っ、あ、あなたは私の運命の人なんだから。きっと忘れちゃっているだけだよ。
大丈夫。私が思いだたせてみせるわ!!」

・・・電波だ。そして、迷惑だ。
そんな電波を、学園長が、僕に命じた見張っていろという任務をよこしやがった。
なんでも、一番心を許しているのが、僕だからだって、・・・最悪。
最悪すぎて、こいつを、殺そう。と何度思ったことか。
勝手に腕に掴むな。
勝手に名前呼ぶな。
勝手に僕の火器を触るな。
ご飯の量を多くして、僕を太らせる気だな。
色々とイラついたことが溢れて、一回殴った。
女だとか関係なしに、だって、こいつ口で言ってもしょうがない。
だから、殴ったら、女は、一瞬呆気に取られて、
えへへと笑い、「同じだ。大好き」だと。
こいつのネジは、三本くらい飛んでいるんじゃないだろうか?
でも、不覚にもその姿が、我が愛しい完璧な彼女と被ってみた。
今よりちょっと前の、僕を必死に追いかけてきてくれた彼女に。
それから、任務だから、しょうがないが、ちょっとずつなくなってきていた。
認めよう。
彼女は、僕の愛しいにほんのちょっとだけ似ていた。
そして、
僕は、が僕とこいつをみて、少し悲しそうな顔をしたのを見れた。
ちっとも嫉妬しなかった彼女が、今こいつに嫉妬してくれている。
嬉しくて、しょがない。
僕は、愛されていたことに歓喜して、
あ。その顔も好きだなんて思って、すぐに、抱きつきにいきたいのを耐えて、
立花先輩の声を思い出し、もっと嫉妬してくれたら、目一杯愛そうと決意した。
そしたら、は僕だけのものになる。
そっから僕は、こいつの行いを許した。こいつの言葉を許した。
そうすれば、そうするほど、彼女が嫉妬して、可愛い顔をみせて、
僕だけを愛してくれると思って。
会いにいって、すぐに愛を語りたくなるのも、抱きつきたくなるのも我慢した。
なのに、は、なかなか頑固で手強い。
さすが、僕の彼女だ。一筋縄ではいかないようだ。
彼女が嫉妬した姿は、僕に一回だけしか見せてくれなかった。
だから、僕はもっと嫉妬させるしかなかった。
電波の行動がエスカレートする。
だけど、僕は許した。許して許してその先になにがあるのか。
僕には、と僕の輝かしい未来しか見えていなかった。

僕は、頑張ったんだ。
一体、何がいけなかったのか。

きっと、僕が馬鹿だったのが悪かった。
彼女に、僕以外の選択肢があることが悪かった。
ちょっとこの天女が、に似ているのが悪かった、
彼女が泣いてることに気付かなかった僕が悪かった。
彼女が完璧になる本当の理由に、気付かなかった僕が悪かった。


僕は、とっくの前から、にとって、いなくちゃ駄目になっていることに
気づかないで、彼女を追い詰めていっただけだった。









2010・07・13