運命は、私と三木ヱ門のためにある。
手を繋げば、花はほころび、嗅ぐわかしい匂いが立ち込め、光が満ちる。
世界に愛が溢れた。

私は、まったくもって完璧じゃないけど、それでも
僕にとって完璧だと甘やかす私の愛する人。
鍛錬は、このごろ文ちゃん先輩と頑張ってる。
足手まといになっているのは分かるのに、文ちゃん先輩は、諦めたらしまいだ。
と喝を入れてくれる。筋肉痛と闘いながら、このごろ少しはましになったような、
ちょっと筋肉ついたような気がする。
勉強は、私の信者こと友人の雹に頼んでいるんだけど、頭から煙が出そう。
だけど、補習の補習の補習の補習が、補修の補修になった。
いっさ先輩的に、よく頑張ったって、だけど、任務全部失敗しているんだ。
それに、胸が控えめすぎる。
おかしい第二次性徴は女のほうが顕著なはずなのに、私の胸は腹と同化している。
胸を押し付けても、腹と間違われる始末。
いっさ先輩に頼んだ胸が大きくなる薬は、
なんでかもっと小さいことになっていた。胸がというか体の大きさが。
可愛がられたけれど、いつもよりも三木ヱ門と、一緒にいれる時間が多かったけど、
すぐ眠くなるし、手足は短いし、なによりも女として扱われていない。
二三日で戻ってよかった。ちなみに、胸は0、5ミリだけおおきくなっていた。
喜んでいっさ先輩に報告しに保健室に行ったら、滝夜叉丸がいて、
そういうことは慎みをもて、馬鹿、と赤い顔で、呆れた顔で、言われた。

私は、完璧な私になるために日々、一生懸命だった。
そんなある日。
世界が割れて、光が満ちた。
それは、私と三木ヱ門の運命の出会いのような光が学園に満ちた。


私はおとぎ話の話が好きだ。
だって、文字が大きくて、分かりやすく、面白いから。
そんな話の中に、天女さまのおはなしがあった。
天女さまと人間の男の恋物語。
最終的には、天女さまは、天に帰ってしまわなくてはいけないけれど、
二人は人差し指に赤い糸をつけて、誓いあった。
『来世で、必ず愛しあって、幸せになりましょう』と
私はその話が好きで何十回も読んでいた。
だって、天女さまは私の思い描ている完璧な女性で、
男を守れるほどの強さ。いくつものピンチを乗り越えられる賢さ。
誰もを虜にする美しさ。二人はお互いを愛して、支えている姿も
愛し合っているのに帰ってしまう悲恋に、何度も泣いたものだ。
だけど、それって、主人公を自分に見立てているからで、
私が彼らを引き裂くための邪魔者だったら、それは、面白くない。

今、忍術学園には、その天女さまが現れた。
現れただけなら良かった。
あ、綺麗な人だな。いいなぁ、羨ましい。
もっと頑張ろうって思うくらいだった。
だけど、

「三木くん」

「冬華さん」

可愛く、綺麗な彼女は、なんでか私の愛する人に近づいた。
会った突然三木ヱ門を指さして、嬉しそうに破顔して、

「やっと出会えた」

なんて、本当にあの天女物語の未来で、出会ったような台詞を言った。
じゃぁ、二人は運命の相手同士で、人差し指に赤い糸が結ばれているのかな。
じゃぁ、私はなんなんだろう?
じっと見れば、彼女は私より全然完璧で、胸だってボンだ。
ぺたりとない胸をさすって、泣きそうになったけど、頭を振った。
ううん。私、頑張る。
彼女よりも完璧になって、三木ヱ門を盗られないように頑張る。
彼女たちを見ている暇があるなら、もっと頑張らなくちゃ。
と、彼女たちから目を離して、鍛錬に向かった私の行動が空回っていることなんて、
必死だったから気づいていなかった。









2010・07・04