帰ればいると思った。
それが当たり前で、それが普通だから。
だって、あの場所は彼女の帰るべき場所だったから。
学園での、彼女はいるべき場所が間違っているから。
本来の場所で、綺麗に直そうと思ってた。
間違えは直さなくちゃいけない。そうでしょう?。
一日、二日、三日、指を、おりながら待っていた。
指の数が増えるたびに、焦りと不安が増えていく。
とうとう指じゃぁ数え切れなくなって、私は彼女の家を飛び出した。
後ろから、誰かが止める声がしたけど、の声じゃないからどうでもいい。
走って、走ってたどり着いた場所は、
高台で、なにかあれば、はそこにいた。
ここから何を見ているのかと、聞いてみたけど、は、答えてくれなかった。
私はの座っていた場所へ腰掛ける。
なにも変化ない、ただ遠く遠く、広く広くどこか地名も知らない場所が連なっている。
急に、ぞっと寒気を感じた。
もしかして。
・・・もしかして?
もしかして、なんなのだ!
なんなんだ。この例えないような不安は。
ぶるりと体が寒さじゃない震えを感じていれば。
「小平太さん」
名前を呼ばれた。そこにはよりも小柄で、よりも声が高い、
じゃないの義妹となった悠がいた。
「今、義父さんと義母さんが、さんに手紙書いてるって」
「そうか」
「まったく、さんも、忙しくて、一言ぐらい言ってくれてもいいのにね。
任務が、入ってたって」
「え」
悠が言った言葉に驚いて振り返れば、悠は優しく笑っていた。
「引っ張りだこなんだって。さん優秀だから。
でね、さんが強くなりたいのって、くノ一になりたいのって、
小平太くんと一緒にいたいからでしょう?
聞いちゃいましてね。この愛されてるね」
「それってどういうこと?」
肩をガシッと掴んでしまった。思わずしてしまった行為は、
悠の体が想像よりも小さくて、壊れてしまいそうな脆さを思いだたせて、力を抜いた。
だったら、裏拳が顔に入っていたけれど、
彼女はなんの装備も持たないから、ただ受け入れるだけ、壊れていくだけ。
ごめんと謝ると、いいの。それだけ愛してるんでしょう?さんを。
と茶化す、それから、悠は、まるで自分のことのように、を語った。
「忍者の妻は、強くないと死ぬだけなんだって、
死んで泣かれるより、守ってやるぐらいが丁度いいって、言ってたらしいよ。
カッコいいよね!!さん」
「そ、そうか。じゃぁ、は帰ってくるよな?」
「あたりまえだよ。
だって、ここさん家じゃん。
さんは、小平太くんの彼女じゃん。
小平太くん、さんに愛されてるじゃん」
悠のなんの根拠もない言葉を、私は信じた。
信じなければいけなかった。
でなければ、全てが嘘になってしまう。
そうかと、私は笑って、
じゃぁ、が帰るまでこの村を案内しようと立ち上がり、
「悠。なんか、盛夏の口癖がうつってないか?」
「えっ、本当?」
を待つ間、悠と二人、つまらないことを言い合って笑った。
笑って笑って、何かから目を逸らした。
任務ってなんの任務なのか?
は今、本当に一人なのか?
そうして空している間に、休みは終わってしまった。
不安が尽きない、に会いたい。限界だ。
暗い、暗い、暗い。また真っ暗だ。
私が暗い顔をしていれば、悠はいくらなんでも酷いって、
さんに言ってくるって、そう言っていた。
だけど、悠もを見つけられなかった。
盛夏も見つけれなかった。
私も見つけれなかった。
はどこか遠くにいるんじゃないか?
任務は長い月日がかかるんじゃないか?
そんな疑いを持ち始めた時だった。
いてもたってもいられなくて、前を進めばいつの間にか怪我をしている。
放っておけば、滝夜叉丸が五月蝿い。
それよりも、伊作が怖い。
こんな短期間に何度も治療しているから、怒っているけど、
治療しないで放置して悪化させたたら、
怪我なんて一生しない誓えるほどの治療という名の折檻が待っている。
保健室にいけば、案の定グチグチ文句を言う伊作。
足がしびれたなぁと周りを見渡せば、
殺風景であまり色のない保健室に、色鮮やかな赤の花。
私は、その花に見覚えがあった。
が握り潰していた花だ。がよく生けていた花だ。
もしかして。を口にすれば、伊作は簡単に答えをくれた。
でも、その答えは間違っている。
嘘でも酷いから、訂正をする。
けど、伊作は「そう。じゃぁ、叫んでみなよ」と言った。
売り言葉に買い言葉だったけど、伊作に言われて思い出した。
「好きだと大声で学園内を走りまわってもいい」と言ったときに、
は腕の中で、バツゲームだと言ったこと。
は恥ずかしがり屋だから、きつい言葉で隠すから、
うれしいくせに、嫌だというから。
だから、私は、大声で愛を叫んだ。
そうすれば、は私を思い出して、でてきてくれる。
そうしたら、間違いをちゃんと全部、全て、直していこう。
そう思っていたのに、出てきたのは、文次郎で、うるさいっと一喝。
「鍛錬の邪魔だ」
「愛の邪魔しないで」
グルルとうなれば、文次郎は、警戒態勢をといて。
「ん?ああ、あの人だったら、食堂にいるぞ。だから、さっさと黙って、行け」
「食堂?分かった。ありがとう。文次郎」
お礼をいうと、一目散に、自分の出せる速度のスピードで食堂へ向かった。
、、。心のなかで何度も呼ぶ。
あのね、聞いて。
好きなんだ。愛してるんだ。きっと永遠なんだ。
離れてて分かったことたくさんあったんだ。
ねぇ!
私自身が出した土埃で前が見えない。
だと思って引っ張ったら、違くて、驚いた目でこっちをみている。
私は、手を離して、文次郎のところまで戻った。
「いなかった!!なんで嘘教えるんだ」
「は?」
文次郎は、クナイをかっと木に投げていて、私の言葉に首をかしげていれば、
木の上から、ひっこりと、仙蔵が出てきた。
「なんだ、なんだ、どうした?」
「いたのか、仙蔵」
「お前が来るよりも前から、いたぞ。ここは寝心地がいいからな」
文次郎が何か言いたそうに仙蔵を見てるけど、さらりと流して、
「食堂にいなかったか?さっき私は出会ったんだが」
「おい、俺が来る前からいたんじゃなかったのか?」
文次郎のつっこみを仙蔵は、華麗に無視した。
「悠さん、なにか取りに行っていたのでは?」
仙蔵の言葉に目がチカチカする。
何を言ってるんだ。私が愛を叫ぶのは。
「悠じゃないよ。だよ」
そういえば、仙蔵は黙り、文次郎が眉間にシワを寄せた。
「大丈夫か?小平太
は、食満の恋人だろう?なんで振った女追いかけてんだ?」
大丈夫なのは、そっちだよ。文次郎。
「は、私の恋人だ!!」
「おい、小平太。お前本当に大丈夫か?」
「私は正気だ」
しつこいくらい聞いてくる。
伊作といい文次郎といい間違えが反映してる。
はやく見つけなくちゃ。それで、はやく直さなくちゃ。
そう思えば、目の前の二人はヒソヒソとささやき始めた。
「もしかして、気づいてないんじゃないか?文次郎」
「はぁ?あそこまであからさまなのにか?そんな馬鹿な」
「何ヒソヒソいってるんだ。はどこ?」
急いでいるんだ。早く会いたいんだ。もう限界なんてとっくの昔に超えているんだ。
はやく抱きしめたい。はやく言葉聞きたい。はやく愛したい。
そわそわとしている私に、やけに真剣な顔をした二人。
仙蔵が私の前に来ると、名前を呼んだ。
「小平太」
「なに?」
「小平太、お前、いつからとあっていないんだ?」
「休みの前よりも、前だよ。これ意味があるの?
私早く見つけなくちゃいけなんだけど」
「・・・そうか。毎日会っていたのに、会いに行っていたのに、
その休みの前になにがあったんだ」
「なにって」
なにって、そりゃ。
思い出すのは、小さな守らなくてはいけない脆い女の代表格。
それがこちらを向いて微笑んでいた。
私が無言でいると、仙蔵はそのまま続けた。
「その間は、一人だったんだ。
お前がを探している今よりも、長く一人だった。
お前はその間、誰に愛を囁いた?
はそれに何も言わず、ずっとお前に会わない。
それがどういうことか分かるか?」
「分からない、分からない、分からない、分からない!!」
私は耳を塞ごうとした。
なんでそんなことをしてるのか分からない。
だけど、続きを聞きたくなかった。
「聞け!小平太」
だけど、仙蔵の凛とした声がその場を支配する。
恐る恐る顔をあげれば、仙蔵の綺麗な顔があって、
切れ長で、綺麗な瞳が私を射ぬいた。
「お前が叫んで、愛が届くのは別の相手だ。
してみて分かっただろう?
だから、は、お前じゃなくて、食満を選んだ」
その言葉を聞いた瞬間、
世界が真っ暗、真っ暗で先が見えない。
光はどこ?だ!
がいて、叫んで手を伸ばしたけれど、
は、私を見ずに、留三郎の手を掴んだ。
しばらく見ていなくて忘れてしまいそうな、笑顔を浮かべて。
あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・っあぁぁぁぁぁぁぁぁ。
私の中で、何かが壊れる音が聞こえた。
2010・07・24