3年間でようやく慣れた声でない声が私を呼ぶ。
私のそばに来てようやく安心した顔をする。
その横で、私はなんで、こうなったのかを考えた。
浦風 藤内は、友人の友人にして、初めて私に対し嫉妬した貴重な人間だ。
そんな彼は、ある日を境に、私の名前を呼ぶようになった。
ある日というのは、急に現れたかと思えば、謝れられて、
そんなこと気にしてないという意味を込めて、ポンと肩を軽く叩いたのだけれど、
自分の能力を忘れていて、やばいな。怖がられる。と思えば
声を出して泣きはじめた。
男が声を出して泣いている姿を見るのは初めてで、
これは私のせいだろうかと茫然としているなかで、彼になんでか、懐かれた。
恐怖に恐怖で頭がぱーんになったという結論が私の中で出ている。
座学は嫌いじゃないけど、人の感情を理解するのは得意ではない。
半日考えて答えが出ないときは、適当に理由を作ることにしている。
それが一番簡単だからだ。
人の気持ちなんて、一日で数回変化しているのだから、
大体でいいのだ。大体で。
それから、なにかと今のように、私の横に来る。
時には、名前を呼ばれ必死な顔して、探されるほどだ。
友人を盗られてしょげていた少年は、なにを思ったのか。
数週間すれば。

「す、好きだ。

ピシリと私の中で何かが固まったが、頬をそめてもじもじしている藤内の姿に、
愛の告白をどうにかバツ印をつけて、ひきつる頬をどうにか戻した。
私がかろうじて意識を飛ばさずに、
導き出した答えは、孫兵に張り合っているのだろう。だ。
彼は、私といるようになって孫兵とよく張り合うようなった。
ずっとフルネームで呼んでいたら、

「孫兵は、名前なのに、僕がフルネームなんてずるい」

で藤内と呼ぶようになった。
なら、私は彼の告白にどう答えるべきが、
うーんと頭をひねって、

「はい、はい」

孫兵と同じように、返すことにした。
そう言ったら「違う」と藤内はむくれて、
私の背中に背中をつけて、本を読みはじめた。

藤内は孫兵と違うようだ。
そういえば、孫兵は私をペットだと思っていたのだっけ、
そりゃ違うかと思いめぐらし、読んでいた本を見直したが、
やはりというか案の定、内容が入ってこない。
前の情報がインパクト強すぎて、文字じゃ勝てない。
違うも何もない。
彼は気づいてないのだろうか。
この茶番劇は、リミットがあることを。
彼は、友人が戻れば私から離れていく。
そして、あの人にずっと周りに、人がいつづけるかどうかは分からないけれど、
今は物珍しさが先行している。宝探しのような宝の存在。
誰かの手に渡されば価値が下がる。
そうすれば、自然と元のように戻る。彼の友人も元に戻る。
彼が持っている気持ちは孤独になりたくない。そんなことだろう。
そうして彼も、元通り。
ならば、私のそばにいるのも時間の問題だ。
なんで、こうも孫兵といい、藤内といい一癖も二癖もある奴ばかり来るんだろう。
ああ、一人になりたい。













2011・1・30