ばかなコ 2



急に告白したちゃんに、兵助くんは、口元を覆って、
至極真面目な顔で切り返した。

「それは・・・どこまで?」

固まった空気が緩んだものの、ちゃんは
兵助くんの言葉にちゃんと返した。

「街に一緒に出かけたり、話したり男女の仲になったり」
「なるほど・・・そっちの付き合うか」
「兵助くんまでボケないでよ」

とうとう僕が突っ込みを入れたものの、
でもなタカ丸さん、付き合うって急に言われたらそう思うだろう?
と言われたが、急に言われたらどっちみち付き合わない。
どこまでも行きやしないよ。
と思っていたが、ちゃんは、
兵助くんに手が届くより近い距離でちゃんは言った。

「恋人がダメなら、それっぽい恋人になってくれ」
「いや、でも」
「好きかどうかはどうでもいい」
「え」
「一緒にいればそれでいい・・・ダメ?」

近くにいた僕には久々知くんの気持ちは、よく分かる。
緊張していた雰囲気を緩めて弱くなったちゃんは
目に涙をためていて、捨て犬のようだった。
へにょとなった耳としっぽが見えた。
借用書の保証人になってと言われてもハンコを押しそうな勢いな
それに、どうやら兵助くんもそうだったらしく、
こくんと頷く前に、
滝くんと喜八郎くんが兵助くんとちゃんの間に入って叫んだ。

「ダメに決まってるだろう!!
あのな、恋人っていうのはそういうのじゃない。
好きじゃなくちゃいけないんだ」
「と、いうわけで、久々知先輩さようなら」

ちゃんが二人にどこか連れていかれそうになった時、
兵助くんが叫んだ。


「名前は、なんて言うんだ?」
。あなたの名前は?」
「久々知兵助」

ちゃんは何度かその名前を呟き、

「やっと見つけた」

喜怒哀楽が顔に出やすいちゃんには珍しい
なんともつかない笑みで笑った。









というくのたまに出会って、色々考えていた。
考えすぎて豆腐は醤油まみれになってしまった。
どうしたんだ。と騒がれたけれど、
豆腐は醤油がなくても食べれるかなと言ったら、
心配された奴らが席に戻った。
うーんと歩いていると、考えている人が向こうから歩いていたので、
手をあげた。彼女も手を上げて俺の側で止まった。

「あれからずっと考えたんだが、それっぽい恋人ってなんだ?」
「曜日を決めて話し合いすればいいと思う」
「・・・じゃあ、水曜日でいい?」
「なんでそれで承諾するんですか。久々知先輩!!」
「平と綾部」

どうやら最初からいたらしい。気づかなかった。

、本気なの?」
「うん」
「そう、話し合い場所はここがいいと思う」
「喜八郎私は、まだ」

というわけで、その日から俺は、とココらへんで水曜日で話し合うこと

になった。







「なんでいる?」

水曜日のココには、以外に二人がついてきた。
平は、唾を飛ばしながら熱く語る。

「久々知先輩、は分かってないんです。
だから話し合いとか必要ないし、それなら私の話のほうが有益で」

うざったいと思ったのか、綾部は平を横にずらし、俺をじっと見つめた。

「観客がいてもいいと思う」

綾部が何を考えているのか分からない。
苦手な部類の後輩に悪戦苦闘していると、
は、二人を気にせず話を振る。

「久々知兵助は、主にどこにいる?」
「5年い組、は?」
「滝と喜八の側にいる」
「そうか、できれば、苗字か名前のどちらかで呼んで欲しい」
「久々知兵助は嫌い?」

嫌いかな?そういえば考えたことなかったな。
と沈黙する俺に、綾部が口を挟む。

「その前に、は年下だから、
久々知先輩には敬語だと思うよ」
「・・・・・・敬語、です。ます。苦手です」
「ちなみに、俺は豆腐が好きだ」
「私は黒豆が好きです」
「惜しいな。色違いだ」

笑うと、も笑った。
それからなんだか話が弾んで、くだらないことを
語り合った。
その横で平が

「くっそ、私の天才的な脳みそをもってでさえも、
二人が次何を話すか分からない」

と唸っていたことなんて知らないくらい熱中して。


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