どこもかしこも傷ばかりだ。だからどうした。私はまだそれでも生きている。
だからどうした。って叫べた気力がそろそろ底をつきそうだ。
いいや、底を突つくまえに誰かに渡された手紙に、まだの終わりを感じた。
障子を開ければ、土下座をしている少女が一人。
え、なにこれ?と隣の留さんを見れば、彼も土下座していた。
え?ドッキリ?と一応部屋の札を見てみれば
善法寺 伊作と食満 留三郎と書いてあった。
人が通る気配がしたので、急いで部屋の中に入って襖を閉める。
「・・・・・・何しているの?」
「善法寺 伊作。お願いがあるの」
「いや、ちょっと土下座をやめ」
やめてと言おうとしたら、蒼は、また深く土下座してゴンと音がした。
「あんたが望むなら、実験体の役でも、腕一本でも、足一本でも、
目でもなんでもあげる」
ゴンとまた音がした。その前に、僕が蒼にどう思われているんだろうと
悲しくなったが、二度目の床への頭突きで、額から血が出ている。
「ちょっと、蒼。血が出てるから土下座止めてよ」
「いいや、お願いをきいてくれるまで、やり続ける」
「ちょっと、留さん」
「悪い。伊作。俺も止めれない。寧ろ同じことをする」
と、二人でゴンと床に頭を叩きつけている。
なんなのと思うよりも、止めさせないと。
「もう、分かったから、きくから止めてよ」
といったら、二人は床から顔を上げて、
額から流れた血と、血走った目で僕を見る。正直怖い。
がしりと二人に掴まれ、ひぃぃと声が出た。
「「今の言葉取り消しは、出来ないから」」
と、脅された僕は、ひとまず彼らに治療とお茶を出せば、二人は落ち着いたようで、
静かにお茶を飲んでいる。
「で、どうしたの?お願いって」
二人は目を見合わせ、蒼がこくんと頷いた。
「直球で言うわ。と結婚して欲しい」
言われた言葉を理解するまで、数秒かかった。
「え?」
「顔が赤い。脈はありそうね。さすが留。情報は正しいわね」
「だろ?」
だろ。って別に僕はにそういう気持ちを抱いているわけではないけど、
いや、このところよく彼女と一緒にいるし居心地良いし、
不運が不運じゃなくなるし、そりゃ、いいなと思わなくも・・・
違う。そうじゃなくて。
「っていうかそんな、いきなりすぎじゃない」
と言えば、留さんは、僅かに殺気を放ち、蒼は目を伏せた。
「時間がないのよ」
「え?」
僕は走った。走って走って、彼女のいるだろう場所へ走った。
彼らに言われた話がまだ信じれない。
理解できない世界で、忍びの世界がきつい世界だって思っていたけど、
それ以上で、今、少しだけ泣きそうだ。
。
君のその透明な膜は、なんでそんなに綺麗なのか。
そんな世界にいても綺麗なのか僕には分からない。
2010・1・11