「ごめなさい」

ぐしゃぐしゃに涙で顔を歪めて泣いている蒼。

「ご、めん、なさい。ごめん、なさ、い」

ボロボロと落ちる涙が、綺麗で、
私よりも身長が高い蒼だけど、縋りつくように私を抱きしめるから、
私のほう大きい。彼女の綺麗な髪が、私の体に絡みついた。
泣かないで、泣かないで。
私は平気。こんなことどうってことない。
元から、彼とは終わっているんだもの。

「ごめ、ん、なさ、い。

謝らないで、私のためにやってくれたんだから、
怒るなんて悲しむなんてありえない。嬉しいよ。
だから笑って。
蒼は笑顔の方が似合うから、泣かないで笑って。

「ごめん、なさい」

と思うのに、謝る声は止まらず私は上を向くことしか出来なかった。
今日も空は、憎らしいほど、晴天。
彼らが私達の、いいえ、私の命の有無を決める。
死んでも、意味がないと分かっている存在は、意味がないものかもしれない。
今日も空は、蒼い空。
この蒼い空は何度目だろう。あと何度私はこの空に怯えるのだろう。
蒼のように、涙を零してくれれば私の命は消えずにすむのに。

でも、駄目かも。私きっとそろそろなんだね。

だから。


ちらりちらりとこちらを伺うような視線を感じて、やんなる。
見ないでよ。私を見ないでよ。
前みたく、透明存在でいいじゃない。
あなたは私を捨てて、彼女を選んだから、私なんてどうでも良い存在。
そう、意味のない存在でしょう。
だから、見ないで、私を見ないでよ。
じゃないと、すべて吐き出しそうになる。
じゃないと。

「ハチ〜」

と甘い声が聞こえて、視線が消えた。
ぎゅと目を瞑ったのは、安堵か悲しみかどっちか分からない。

ああ、どうか。神様。
私は幸せに死んでいきたいのです。
憎みたくはないのです。
だから、私の考えが変わってしまう前に終わらせてくれても良いのです。















2010・1・11