真実を教えようか?
よーく竹谷に言った言葉思い出してごらん?
おかしいところ、いくつかあっただろう?
時を巻き戻して、が連れ去られた後、僕はすぐに動いた。
何をすればいいか、まずは、仲間だ。と留さんの所へ行った。
留さんは、僕の顔を見てすぐに理解して蒼に言おうと彼女の元へ行こうとしたけれど、
僕らは部屋の中に戻された。
おかしい、出て行ったはずなのに、入っている。
何度か繰り返して、声が響く。
「無駄。幻術を解くまで、何も出来ない」
そういって現れたのは仮面をしている女三人。
服装から忍びだと分かる。僕らは、クナイを握り締めようとしたけど、
二人に、僕らの手は捻り上げられた。
学園の教師すら分からず入ってこられるほどの腕前に、
ひよっこの僕らが敵うはずはないけど
今はそういうときじゃないのに、僕の不運は拡大しているのかと泣きそうになった。
声を出した女が、僕らを拘束している女に、拘束を解くように命じる。
「ここにきたのは、命を奪いにきたわけではない。ちょっと手伝うだけ」
総指揮をしている女が、僕の元へ来た。
真っ黒な仮面には、片目だけ穴が開いており、そこから僅かに見える人の部分。
しかし、そこからも何も一つ人らしいものを読みとることはできなかった。
何を言われるのか、瞬き二三回の間が凄く長く感じた。
「竹谷 八左ヱ門は放棄した。最後の選択だったが彼は来なかった」
何を言っているか分からないけど、のことであることが分かった。
僕は、拳を握った。
自分ではを、救えないこと。竹谷が助けなかったこと。
すべて憎らしい。
僕の感情など、興味がないとばかりに、彼女は淡々とそのまま言葉だけを発した。
「善法寺 伊作。が、好きか?愛しているか?結婚しても彼女を捨てない?
子供が出来たら、幸せである?」
「もちろん」
「即決即答。その言葉ゆめゆめ忘れるな。お前にたくそう」
何を?と聞かなくては分からない僕は、は組である。
理解力が乏しい。けれど、彼女の何も映し出さないはずの黒い仮面が、
先ほどよりも幾分柔らかくなっている感じがした。
「を、助ける案にのろう」
が、人柱になるまであと、三日。この間に準備をする。
何一つ失敗は許されない。
そして、これは一種の賭けでもある。
作戦を、口だけで言われる。
僕らの役割を聞き、コクンと僕と留さん、二人で頷けば。
留さんが、そのまま退出しようとする彼女らを止めた。
「あんたらは一体」
「私達は人柱の監視役だ」
「・・・・・・いいのかよ。こんなことして」
少し留さんが彼女らを疑っていることが伺えた。
それはそうだ。この計画には蒼の命をもかかっているのだから。
彼女らは、お互い顔を見合わせるとこくんと頷いた。
「私達の中には、姉や妹や友達が人柱になったものがいる」
「彼女を助けるのは違反だ。だけど」
「人柱に意味がないは許されない言葉」
彼女らは、黒い仮面をつけていた。声だって震えるようなことはない。
だけれど、仮面で覆っているから分からないだけで、
彼女らは僕と同じであの子に、恨みを持っていた。
「天女なら、天に帰ってもおかしくないだろう?」
その一言には、心の声が聞こえるようだった。
天女という存在がいないと分かった上での、嘲笑。
そうだろう。
自分達の大切なものが、死んだ理由が、死んだ事実が、そのもの自身さえも、
意味のないものだということがどんなに、どんなに悲しいか。どんなに憎いか。
彼女は、知らないうちに地雷を踏んでいたようだ。
けどそれは僕にとって神風だった。
2010・1・17