!」

光の中にいる人物をみて、馬鹿来るなと言いたかった。
だけど、もう薬が効いてしまって目だけしか動かない。
・・・・・・馬鹿。そんな満面の笑みなんて見せなくてもいいの。
さっさと、ここから帰ればいいのに、手なんて繋がないで、

一人じゃないよ。なんていいの。

あなただけは、幸せでいて欲しかったのに。
蒼、あなたは私の夢だったのに。



走って走って走ってこけて走って。
辿り着いた先では、見知った人たち。
私が、止めるだろうと思って、みな警戒する。
あはは。出来るわけがない。かなう訳がない。
なぜ、学園に入りくのたまとなったのに、逃げる技術があったのに逃げなかったのか。
答えは簡単なことだわ。かなわないからよ。
この村は、ほとんど忍びの訓練を受けているもの。
つまり、忍びの里なのよ。
学園に人柱をいれるのは、理由なんてOBが見張っているし、
何かあればすぐに話がいくようになっているの。
あそこは、小さな監獄だった。
社に行く道は、塞がれている。
塞いでいる人をよく見れば、私の父だった。
止めろと目が訴える。私は、それに笑って。

「私は、止めに来たわけではないんです」

私がすることはいつも足手まといだって分かっているけど、
だけど、嫌だった。
あのときのように、真っ暗な中、
消えていくことが当たり前な顔して、一人穏やかな顔をして眠る
たまらなく嫌だった。
どんなに悲しいかキツイか寂しいか、はそうじゃないかもしれないけど、
私はそうだから。
これは私のわがまま。許してね。

「人柱は、一人じゃなくても構わないんでしょ?」

父の顔が青ざめて蒼。と私の名前を呼んだ。
ごめんなさい。父さん。
あそこで止めてと手を伸ばしているのは母さんだ。
ごめんなさい、母さん。
私、親孝行は出来そうにない。

「私も一緒に行く。、一人になんてさせないんだから」

あなたたちよりも大事なのよ。が。
は、きっと望んでないけど。

ごめんね。

上を見上げれば、あの時と変わらず蒼い空。
私が愛した人は、この色が一番合っていて、
とても可愛いくてかっこいい人だった。
愛してるよ。愛していたよ。
人に迷惑かけまくって、謝るんじゃなくて、怒るんじゃなくて
一緒にやってくれたこと嬉しかった。

ごめんね、留。

黙って、いってしまう私を許してね。
愛しているわ。愛していたよ。凄く凄くこの世の何より私より愛してる。
だけど、を、一人にさせたくないの。
私を忘れて、私を忘れないでね。
矛盾した気持ち抱いて社へ歩く。
かっこ悪い、私。ちょっと手が震える。
あの時ののようにはいかない。

社を開ければ、がいて、あの時と同じように目を瞑っているから
名前を呼んだ。彼女は、ピクリと動いて目を開けて私を映したから、
伊作の薬を飲んで、手を握った。

「温かい。生きてる。ねぇ、。私達まだ生きてるね。お揃い。
だからは、一人じゃないよ」

なんて、馬鹿なこと言った。
目しか動かない彼女が、少し怒っている、悲しんでいるの分かるけど、
笑う。、なんでが笑っているか。分かったよ。

後悔するだろうから後悔しないように動いた。
伊作の薬はよく効く。
私のほうが先に瞳を閉じてしまいそうで、
最後に見えたのは、とてもとても幸せそうなの顔。

私が本当に、見たかったもの。

大ききすぎて全部見通すことが出来なかった。
でも、今なら言える蒼い空は、によく似ていた。


大好き。
さようなら。みんな。


次の世界は、今度こそ蒼い空の下で、共に笑いある世界で。









動かない体をどうにか動かしてみた。
たかだが指一本だけ動いた。
目の前に眠る蒼を、その一本で起こすことなんて不可能だって
分かっているけど、諦めることができなくて、動かす。
辿り着いたのは、温かい体温だけ。


告白します。

私、本当はすごくすごく、今すごく。嬉しいんです。
蒼には幸せになってもらいたいと思っているのに。
私が叶えなかった夢を蒼なら全て叶えてくれると思うのに、
なのに嬉しいんです。
一人じゃない。なんて、ええ、その通り。私は一人じゃなかった。
くのたまの子と仲良くなって、恋の話とか、体のこととか、
甘い話に、流行の服の話、くだらない話に花を咲かせて、
みんなで外で出かけて、任務も手を組んで忍たまに勝った事とか、
大声で笑ったこととか、後輩が可愛くてしかたがなかったとか、
ハチとも、悪いことだけじゃなくて、笑って泣いて怒って、馬鹿で無鉄砲で
大雑把だけど、それをひっくるめて好きで、毎日楽しかった。
そして、短い期間一緒にいて、私を好きになってくれた伊作先輩。
人を癒す人で不運だって、みんな言うけど私といたとき不運なんかじゃなくて、
私がいるだけで幸せになれるって恥ずかしい台詞を素で言える人だった。
本当はね、結婚しても後悔しない人だった。ハチを忘れれる人だった。
だけど、結婚を一日でなんて無理なんだ。
見張りもいたし、あの日がタイムリミットだったから。
伊作先輩には、すっごく幸せになってほしい。
こんなに私を幸せにしてくれた人だから。
明日死ぬかも知れない私だったけど、奇跡みたいに幸せな日々が溢れてくる。
目の前には、眠っている蒼。
蒼。
私、蒼がいたから、今本当の幸せに包まれているよ。
握ってくれた手が温かいよ。一人じゃないよ。
本当はね。死ぬのは私だって怖いんだ。生きていたかったんだ。
憎むとかそんなこと抜きにして、笑って幸せに生きていたかったんだ。
だけど、いいや。
私は、もう一人じゃない。
蒼と一緒だから、いいや。
私、本当に幸せ。憎しみなんて塵に消えた。
きっと今は、本当に笑えている。涙がつぃーと横に流れた。
蒼。
あなたは、蒼い空のようだね。温かくて心が満たされるよ。


ありがとう。蒼。
ありがとう。みんな。


次の世界は、今度こそ蒼い空の下で、共に笑いある世界で。












2010・1・15