みーんな助けてくれなかった。
誰も、父親も母親もおばーちゃんもおじーちゃんも優しい村長も友達だって
誰も助けてくれなかったのに、たった一人助けてくれた。
扉を開けて、綺麗なお花取れて、今日の夕飯なんだろう。
今日も楽しかったこと、一杯喋りたいのに、

みんな、泣いてた。

「あなたは、人柱候補になったの」

と、泣き腫らした目で私を優しく抱きしめるみんな。

「名誉あること」

「聞き分けて」

「お前の命がみんなを救う」

そんなの、いらない。
そんなの、必要ない。
ふざけんじゃない。泣きたいのはこっちだ。
花はちりじりに落ちた。
助けて、助けてと、
泣き喚いた私は、必死に生きる術を探して走った。

ああ、でも、私の命の期間とっても短くて、
一週間後に、儀式。それから三日後に焼いて灰になる。
私の命がいかに重要で重大でとてもありがたいことか、って言ってくる人たちに
手当たりしだい投げつけて、
「死にたくない。生きたいよ。生かせてお願い」
って、言えばみんな曇り顔で、

ああ、私を助けてくれる人は誰一人いない。
ぎゅっと布団にもぐった。
ご飯も、眠ることもしないで、蒼い空に、怯えたように、部屋の中に潜り込む。

私、蒼い空なんて大嫌い。大嫌い!!
お願い、私の一生のお願い
雨が降って、そうしたらあんたのこと好きになるし、いい子になるから。
いい子になるから、許して。

でも、現実は残酷で、一週間と三日なんてあっという間。
久しぶりに出た外は、やっぱり蒼い空。上を向いて泣きそうになる。
しにたくない。しにたくない。

しになくないよ。

だから、私以外の二人の人柱候補者を見たとき、
一番の友人がいて、もしかしたらと、しがみついた。

「お願い、お願い。交換して、私生きたい、死にたくない、死にたくないの」

私のしがみついた手は強かったけどそれ以上の力で、引き離される。
彼女は、見たことない冷たい顔して、私を見ていた。

なーんで、なんで、誰も助けてくれないんだろう。
私が暴れることが非常識のように、みんな目が冷たい。
怖い怖いよ。人が怖い。
決まるまで温かった人が、みんな敵になって、私を見ている。
私が、死ぬのはなんだ?
神様の生贄か?違う。こいつらのせいだ。
私はこいつらに殺されるんだ。だから、助けくれるわけもない。
父母じーちゃん、ばーちゃん、泣いてるけど、そんなもの偽者。
どれもこれも、全部偽者。
泣くことも疲れてた私はもう反撃できそうにもない。
渡された飲み物を飲んで、目の前にある社にいれられて、燃やされる。
ああ、もうどうでもいい。ああ、でも、しにたくない。いきたい。

「生きたいよ」
私が、小さくポツリと呟くように言ったときだった、一人の少女が手を上げた。

「代わります」

そういったのは、もう一人の生贄候補。
この子のこと私は、知ってる。当たり前、いじめていた子だったから。
いつも一人でいる変な子で時々見下されている気がして、
嫌いな子だった。


嘘だって、思った。
きっと今までの仕返しで、途中で笑ってなんて嘘!って言うつもりだって、
私に優しかった人ですら、敵なのだから、彼女が味方だなんてあるはずないのに、
いいのか。と村長の声に、大丈夫と言うと
私の目の前に置かれた薬を飲んで、そのまま社に向かっていくから、
私はとっさに彼女の手を握った。
彼女は、私の手を離さないで、握り返してくれた。

ああ、そういうことなんだ。

私を見捨てないでくれたのは、私が嫌いな子だけだったこと。
彼女が、嫌な子じゃなくて、誰よりも何よりも優しい人だったこと。
最後私を見た目は、いつものような冷たい目でなくて、温かい眼差しだったこと。

自分のことではいくらでも喚いて泣けたけど、
そういえば私も初めて人のために涙したということ。
そうか、私も彼らと同じで、自分が可愛くて仕方がない、
きっと誰かが同じ状態になっても、

するりと私の落とした手に、彼女は一人で進んでいった。

彼らと同じことしてただろう。

彼女が入ってすぐに、空から雨が降った。
ポツポツと頬に当たる雨は、奇跡と呼ばれたけれど、私には当たり前のように思えた。
父母が良かった良かったと私を抱きしめてくれた。
なかなか離してくれなくて、ようやく逃げれた時に、
社へ向かえば彼女は一人暗い闇の中で眠っていた。
永遠に眠り続けてしまいそうで、穏やかだったけど、それが悲しくて。
だって、だって、私には抱きしめてくれる人がいたけれど、
彼女は私が来るまで一人だったから。私が抱きしめた。
彼女の体温は少しだけ冷たくて、また泣けた。

目を覚めて、は驚いた顔してた。
死にたかったの?と聞けば、
ううん。同じだよ。でも、少しだけ、あなたよりも生きたくはなかったそれだけ。
なんて一つ下の子が笑いながら言っていたから、

私は絶対、を幸せにしようと思ったの。
一緒に幸せに、なれると思ったの。
だから、
お願い、伊作。お願い。
私はあの子の足ばっかり引っ張って、一つも恩が返せてないの。お願い。

を、助けて。











2010・1・13