どうしようもないくらいの蒼い空の下で涙した。
だれもいないこの場所で一人、目からこぼれる涙は頬を伝って、地面に落ちる前に
生い茂る草の上に落ちた。
もう、これが最後だろうと分かっていたけれど、声を出して精一杯泣くことができずに、
無言のまま涙を零した。
「」
と呼ばれて目を開ければ、一つ上の先輩で幼馴染の蒼がいた。
くのたまで5年と6年は少ないから、一緒の組で、
私を起こすと、感情が激しい蒼は、行こうと言った。
「どこに?」
「あんたの元彼氏よ。私は絶対許せないんだから」
ギラギラと彼女の大きな目のうちに燃えたぎる蒼い炎が見えた。
彼女の言っていること。分からなくもないけど、
ふっと笑った私に、なんで笑っているのって怒ってる。
「蒼は、好きだね。私のこと」
そういったら、私の裾を離して、立っていたのを座って、
耳まで真っ赤な顔を横にして誤魔化していた。
それから、蒼の手は、裾から私の手に移行してぎゅっと握り締めた。
ごめんなさい。留三郎先輩。今日もあなたの愛しの恋人を
私は独り占めするようです。
****************
彼女が現れたときに思った、私はもう戻れないのだと。
遠い所で一人そう思った。
ある日、世界が光って、彼女が現れた。
誰かが言った言葉「天女」その通り。
彼女は「天女」であった。
みなの憧れ、夢、希望、全てひっくるめた人であった。
だから、
男が陥落していく様を見ていて、私は涙が出なかった。
好きな人が私を捨てて陥落していて、私は涙が出なかった。
手を大きく広げて、そのまま原っぱのうえにダイブして空を仰ぎ見たら、
どうでもいいと思えた。
この広さに比べて、小さな箱庭でしかない忍術学園の恋愛ごとなんて、
小さなことよ。
時が来たらいつか尽きる命。
このまま立ち止まってなどいれないけど、何も考えたくない。
目を閉じれば、木々のざわめきと小鳥のさえずりが聞こえて、
真っ白になって、このまま目を開けることなく、一緒に空にとけてしまえばいいのに
そうしたら、明日のことも生きることも死ぬこともなにも考えずに、幸せであるのに。
静かに目を開ければ、当たり前だけど、世界は崩壊もしてなければ、
鳥も木も私も存在していた。
音が聞こえて、匂いが分かって、空が見えて、体は自由に動く。
それなのに、どうして私は自由ではないのだろうか。
そんなこと、考えてもキリがないことだけど。
夕日が落ちて、空の色が真っ暗だ。
昔は、誰か私を迎えに来てくれた人がいたけれど、
手を繋いで帰ったけれど、今は土を握り締めている。
どうせ、死んだら一人だから、大丈夫と土を払って起き上がる。
お腹がすいた。ご飯を食べよう。
私はいつもどおり眠れて、ご飯も食べれて、話も出来て、泣きもしない
笑って、いつもどおり。
そう、いつもどおりに出来る恋だった・・・ってしなきゃ、報われない。
2010・1・10