私との出会いはなんだったか。そんな遠くのことはもう忘れた。
いや、忘れたい。
出来ればもう一度出会う前からやり直して会わずに生きるという選択肢を選びたい。
私にとってという人物はそういう人物で、
年下で女なのにつまらないことで喧嘩をし、
殴り合いにまで発展した人物にもう会うことはないだろう。
彼女は会った当初から私を馬鹿にした目で見る。
名前を知れば呼び捨てで、利吉と言う。
なんどさんをつけろと言ったか分からない。
しかし、彼女といて分かったのは、
こいつは私だけでなく人を馬鹿にしている。世界までも馬鹿にしていた。
こいつが真剣になる時はなんであろう?
簡単だ。彼女は、早乙女 愛が関わったときだけそのときだけは
死人似た赤茶色の色を輝かせる。
だからこそ、なお私はが嫌いだった。
今回の私の任務は学園からの任務で、早乙女 愛ともとも関係なかった。
私の任務は、ノボタケ城の入荷した武器と戦の情報と簡単な内部報告だったと思う。
その内容に、が入ってきたときはあの体力馬鹿がと笑ったが、
愛がこの城に着た時は、私から笑みは消えた。
私の経験から内部情報は、細部までになり、愛と殿の動向を観察したが、
ある日を境目に明確に分からなくなった。
そのことを学園に告げる前に、が来たと言う所だ。
が来て愛がここにいる。
これが指すところは、
私の任務は簡単なものから、命をかけるものへと変化したというところだ。
いつもヘラヘラしながらきつい任務に出ているが、
一皮で命のやり取りを笑顔で交わすコイツが、まったく笑わずに、
相変わらず音もなく動くが、微妙に違う。
装備している武器がどのくらいの量か明確には分からないが、
いつもの比ではないことは確かだ。
「おい、利吉。一言遺書を言うなら届けてやろうか?」
「馬鹿いうな。お前こそないのか?」
「言う相手は愛だけだ」
今回がどんなに正念場か分かる。
現に奴が遺書なんて初めて言ったし、そこに隠された
無理ならば去れという変な優しさを見せ付けられた。
暗闇の中、殿の寝床に侵入した。
やけに静かで、嫌な予感しかしないが、前のは、静かに襖を開けず
そのままパァンと音が出るほどの力で襖を開ければ、
何人いるのか分からない忍びの群れと、弓兵。
「ここは違うみたいだ」
それが皮切りに打てという声と忍びが近づく気配がした。
私達は両方向に別れ、そのまま上へ登る。
忍びたちの腕もよく人数も多いが、中の上。
私は、何人かの忍びを倒した所での方へ目をやれば、
の周りに男が二・三人だけ立っていて他は倒れている。
一人の男はかくかくと妙な動きでおかしなことに味方を倒していた。
息絶えているのだろう。彼からは生者の色はなく、クナイを最後の一人の首に刺すと
そのままと共に下に下りた。
残念なことに弓兵は全滅だろう。
下からは叫び声が聞こえ、私は音がなくなってから
の傍に降りた。
彼女はピンとさっきの男に刺さっている糸をピンと張らし、元通り自分の元へ戻していく。
彼女は、暗器の名手で有名であるが、その裏で一つ技を習得していた。
あまり知られていない、対大勢の人のときのみ使われるそれを傀儡子と言う。
暗器のときも糸を使うことから、それを人に使った応用編だ。
死者の遺体を使うなど、言語道断だと昔任務にいた誰かが彼女に食ってかかったが、
忍びである時点で、卑怯とか道徳観などあるのかとうるさそうにそいつを伸していた。
その通りだ。私達忍びはもはや歪んでいる。
そこに正論など持ってきてもどうしようもないのだ。
は、阿鼻叫喚の部屋をそのままに
奥の襖に手をかけると何枚も何枚も襖が続いている。
奇妙な絵が何枚も何枚も描かれた襖を開け、開け、開け。
「、この道を選んだのは?」
「お前が描いた地図によりとそろそろ大広間に出る。それと、臭うだろう」
にやっと犬歯をみせ笑う彼女は、獣のようで、私はくんと鼻を動かし。
横に飛んだ。
ドォーン。
横に飛んだと同時に火薬の臭いと爆風。
どうやら、新作の大砲のテストに使われているようだ。
つまり。
「進入したことはばれていると言うことか」
「殿の部屋にあんなに人がいれば、そこらで分かると思うけどね。
あの天女偽と連絡取り合っている奴がいたはずだろうから、私が蹴ったところで
もう情報は渡ってた」
「・・・・・・それを最初に言え」
「知ってると思っていた」
むっと眉間に皺が寄っているのを、面白そうには見ている。
「まぁ、怒るな。これで面倒な襖を開けなくてすんだ」
前を向けば、多くの兵や先ほどよりも少ないが強い忍びに囲まれて、
殿とぐったりしている愛の姿があった。
「・・・・・・これは、どうしようか。利吉。下手したら死んじゃうね」
そういってはこの場面でありえないほど無邪気に笑った。
薄ら寒い!!
私はここでお前と骨など一緒に埋められてたまるか。