赤い血を見ながら、そういえば、
愛は赤の色を好んでいたなとぼんやり思い出した。
「なんで・・・なんで殺した」
信じれないという顔をしている利吉に、すっと近づく。
それから、私をそれを掴んだ。
「おい」
利吉の言葉は無視して、利吉がさっきまで抑えていたそれの頭を掴む。
「ふふふ、変な奴だの。お主が欲していたものを自ら壊すとは、
気でも触れたか?」
嬉しそうに笑いながら、瞳を覗き込めば、恐怖がうかがい知れる。
チッと舌打ちした。
こんな茶番劇に踊らされていたなんて、ぐっと腕に力が入った。
顔を歪めるそれに、私は、問う。
「おい、お前、お前が知らない場所があるだろう?」
「我を愚弄する気か?我はここの主。知らぬ場所などあるものか!!」
ずっと空気が重くなったけれど、これぱっちじゃねずみも逃げやしない。
私は、にっと笑い腕を振り上げた。
「ふーん。じゃぁ、これいらないよね」
「!!!」
腕の中には、それの左腕。
痛みは感じないはずだ。そういう風に切った。
それがなお恐ろしいのだろう。
痛みなく、体の一部が消えていく感触は。
これは、私が、敵を脅すときの最上級手段だと思っている。
「私は短気ではないから、お好みならばのんびりやってもいいんだぞ?」
そう笑えば、男は、ろうそくの火に水をかぶせたようにおとなしくなった。
小さな声で、地下だ。地下がある。
そこは倉庫だから、下賎なものしか知らん。
答えが貰えば、それにはもはや興味がない。
そのままぺいっと捨てると、忍び達が殿殿と腕の止血を始めた。
私はというと、そこらへんにいた忍び頭を捕まえ、地下に案内させようとしていた。
歩く私の後ろから、地をはうような声が聞こえた。
「覚えておれ、我をここまで侮辱したお主に、地獄の苦しみを見させてやる。必ずだ」
「へー地獄ねぇ。そこ出身なんで、たくさん見たから、いいよ。
あ、その前に、あんたにそんな力ないでしょう」
「我が望めば、お主の家族友人関わったもの、
すべて生きたまま殺してやることも出来る」
そういうそれに、笑いすらでない。
「なんだその顔」
救われない。救われないなぁ。と頭を大げさに振り私は、答えた。
「気付かなかったの?哀れだ。なんて、哀れだ。
その哀れさに教えてあげる。
あんたは、ただのハリボテだよ」
「狂人の戯言か?我が主でなければなんというのだ」
「ねぇ、いつあんたが殿様になった?
小さいころを、覚えている?
周りがあんたの言う事を聞くようになったのはいつ?
ねぇ、ねぇ、答えてよ」
私の質問に、殿様の顔をした男は、顔を覆って震えている。
「バイバイにせものさん」
そういって、そのまま消えた私たちの場所に、
あああああああああああああああああああああああああ。
そんな叫び声が響いた。
2011・2・4