戦況はいかに過酷か。
利吉という使える男がいてまだ良かった。
完全に死亡のフラグは回避できたわけだ。
だけれども、大砲による黒いこげた後に、
屍累々なら良かったけど、相手を数人倒しただけ、
その数以上に人は増えていく。
しかも、間も悪いことに、大砲の二段目も着火準備OK。
そういえば任務終えたばっかりで、ちょっと疲れていたのだっけ。
これがあと一時間続けば私達は死ぬのだな。
ちらりと見えるのは、愛の倒れた姿。殿が愉快そうな笑みを浮かべて酒を扇をヒラリ。
『着火準備 目標設置 用意打て!!』
わざと長く相手をしていた一人をそのまま糸で操り、
大砲の口に投げる。
なっという音と主に轟音。この技はあんまりしたくなかった。
だって、匂いが臭いし、暴発しているわけだから、
どれだけ自身に被害を受けるか分からなかった。
けれど、時間がなかったのだ。時間が長くなるほど私も愛も終わってしまう。
ごほっと音がして、
「やるならちゃんと知らせろ!!」と利吉の姿が見えた。悪運強く。
戦っていた相手が盾となったようだ。
利吉はなお私につめようとして、私の姿をみて言うのをやめた。
「お前」
私は運とかそんなもの信じていないが、運を決めているのが神だというなら
あいつを無視してやろうと思う。左の腕を守っていた服は全部焦げて、
肌も少々焦げていて、動かすと痛い。見目は少々悪くなってその姿に利吉が慌てて
処置をしようとするから、時間がないんだ。そろそろ体力も限界。
左手の怪我もちょっと立てば動かなくなってしまう。まだ、麻痺している今なら。
「利吉、自分の身は自分で守れよ」
目を閉じて、全ての感覚を耳に集める。
全て使える敵はこの部屋に集まっているようだ。
さっきの暴発で何人かいなくなったが、殿は何人かの忍びの死を犠牲に守れて無傷。
殿に撤退を言っている。殿様はこんな面白い余興まだ見ていたいとごねているから、
『じゃぁ、お前に、最高の余興を見せてやる』
獰猛に笑い肉食獣。
全身に巻きついている糸を全て解放。糸にはクナイがついていて、
が両手をあげて、ひゅんひゅんと糸が奏でる音と共に、
一本一本の黒いクナイは、集団になり、
その姿は、から黒い羽根が現れたようだった。
あまりにも不思議な光景に、化け物であったその姿に
誰かがぽつりと言った「美しい」をかき消すように、羽が全てを切り裂いた。
大きな黒い羽根は、パンと弾けて縦横無尽に人の急所に刺さり始めた。
ひゅん。ひゅん。ひゅん。
は笑みをやめずに、全てを喰らい尽くすまで糸を操り続けた。
利吉は、どこから来るのか分からないクナイを部屋の端により、どうにか防いでいたが、
の場所にはポタタと血が滴り落ちているのを見えた。
糸から血が落ちている。
それだけではなく、クナイが時々彼女の肌をかすみじわりと血のしみを作っている。
いくら、彼女がくのいちと変わらぬ働きをすると言っても、
まだ15歳なのだ。体が技術についていっていない。
笑みは消えないものの、はぁ、はぁ、と息使いが粗くなってきている。
肉を切らせて、骨を断つ戦い方は、あまりにも見るに耐えれなかったが、
一本一本のクナイの流れるような動きにあわせて
彼女自身の薄葵色の髪が揺れ、赤い花が散り、
手は滑らかなに動き舞っているかのようで、あまりにも美しかった。
一人また一人と倒れて、彼女は自らの体を抱きしめ、目の前の男を睨んだ。
その眼差しに先ほどの儚いほどの美しさは微塵もなく
凶悪な残酷な強者の笑みを浮かべていた。
糸をしまって二本の長いクナイを交差させて、
彼女はそのまま弾丸のように自身の体を殿を守っている数人の
忍びたちに切りかかる。
自身の怪我のことなぞどうでもいいとばかりに。
ばっと、が敵の忍びと距離をとったときだった、
低くもない高くもない声が甘い声が響いた。
「のぅ、お主、我のものにならぬか?」
2010・4・26